新型特急「Laview」が拓く、“いろいろあった”西武鉄道の新たな100年:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
西武鉄道は新型特急「Laview」を公開した。後藤高志会長は「乗ることを目的とする列車に」と強調。西武特急に対する危機感が表れている。この列車の成功こそ、“いろいろあった”西武鉄道を新たな100年へと導く鍵となりそうだ。
西武鉄道、新生までの道のり
新車の発表をテーマとした記事で不祥事の話ははばかられるけれども、新生西武鉄道への期待を高めるために、あえておさらいしておきたい。04年に西武鉄道は社会的な信用を失墜させた。総会屋利益供与事件、証券取引法違反事件によって、堤家による同族経営の終了、株価暴落、上場廃止。引責辞任した前社長の業務を引き継ぎ、新体制発足まで社長を務めた人物も東京地検特捜部の追及のさなかに自殺した。
当時、西武鉄道には大変な嵐が吹き荒れていた。それでも列車の運行は平常通り行われていた。西武鉄道は沿線の利用者を裏切らなかった。現場はしっかり機能していた。ここも重要だ。
後藤氏は第一勧業銀行、金融再編後のみずほコーポレート銀行で取締役副頭取まで出世した後、火中の栗を拾う形で西武鉄道に社長として迎えられた。第一勧銀時代に総会屋利益供与事件が起き、事態収拾に活躍した手腕を買われた。着任後は企業イメージの回復が急務。06年に「でかける人を、ほほえむ人へ」というスローガンを掲げ、07年に「スマイル&スマイル部」を設立。社員の士気を高め、沿線の人々と向き合った。
その1つ目の結実が30000系通勤電車「スマイルトレイン」だ。新しい西武鉄道の象徴として、社内で部署を横断するプロジェクトチームが作られた。女性社員の意見を取り入れて「生まれたてのたまご」をテーマとした。これまでの西武鉄道の車両デザインとは一線を画し曲線を多用。網棚と吊り手の高さを下げ、車椅子スペースに壁面ヒーターを取り入れるなど、優しさを具現化した。この女性らしい配慮は、「Laview」においても女性用トイレ、パウダールームの設置などで継続している。
後藤氏は30000系電車の発表会に社長として登壇している。さらに、地下鉄乗り入れ車両の40000系の発表会にも登壇した。40000系は有料座席指定列車「S-TRAIN」に使用するため、座席の向きを変換させるシステムを搭載している。各地の観光地開発で積年のライバルだった東急電鉄の東横線に乗り入れる車両として、西武鉄道の新時代を担う。
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