活況の“転職市場”を支える「人材サービス」 企業が知るべきことと事業者が心掛けるべきこと:連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(5/5 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が転職に関するサービスを解説する。
求職者をそそのかしてもうけるケースも
悪意ある事業者が人材紹介に携われば、手数料獲得だけを目的とした犯罪行為さえ起きかねません。考えられるのが、悪徳事業者が転職者をそそのかし、一定の手数料を支払うことを条件に入社させ、返金制度を超える期間まで働かせるような手口です。
仮に、手数料150万円で分け前は3分の1、入社後3カ月までは本人都合退職で返金が発生する場合を考えてみましょう。転職者は3カ月だけ働いて退職すれば50万円を受け取ることができ、悪徳事業者には残りの100万円が売上として入ります。引く手あまたのスキルや経験、資格などを持っていたり、あるいはそれらをでっち上げたりすれば、同じ手口で再び別の会社に転職させて新たな手数料を得る、という行為を繰り返すことも理屈上は可能です。
また、最近あたかもおいしい副業のように話を持ちかけて、有料職業紹介事業許可を持たない個人に手数料として分け前を渡すネットワークを安易に広げるような動きが散見されます。人材紹介は許認可事業であるため、免許を持たない者があっせん行為をしたり、それによって手数料を受け取ることは違法です。
たとえ、話を持ちかけてきた事業者が許可を受けていたとしても、その事業者と雇用契約を結ばず、個人業務委託などの契約であっせん行為をして手数料を受け取った場合は違法です。中にはコンサルティング料や情報提供料など、紹介手数料という名目ではない場合もありますが、実態があっせん行為であれば違法と見なされます。
本来、人材紹介事業に携わるには労働法や個人情報保護など相応の専門知識が必要です。“未経験でも気軽に始められます”“専門知識は一切必要ありません”などのうたい文句には警戒が必要です。ビジネスモデルを確認して、違法性がないかを慎重に判断する必要があります。自分だけでは違法性が判断できないときは、各都道府県に設置されている労働局に確認するといいでしょう。
事業者のモラル欠如は、結果的に求職者にも企業にも損害を与えることになり、その事業者への信頼はもちろん、業界全体、引いては「人材サービス」そのものの信頼を損なうことにつながってしまいます。
しかしながら、19年は残念なことに「人材サービス」を提供する事業者のモラルが問われる大きな出来事がありました。次回はその件にも触れつつ、「新卒」をキーワードに考察します。
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