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1日だけのロマンスカー・ゼルビア号 「歩く楽しさ」でファンを増やす、小田急の狙い杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

小田急電鉄は、FC町田ゼルビアとコラボした臨時ロマンスカーを運行した。自社開発の歩数アプリ「ARUCLUB」で、サポーターたちが“みんなで1000万歩”を達成したからだ。アプリを通じてスポーツチームとコラボすることで、小田急のファンを広げる面白い取り組みだ。

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「みんなで1000万歩」を達成したら特別列車を走らせる

 FC町田ゼルビアと小田急電鉄は、これまでも「小田急マッチデー」などのイベントを開催し、チームとファンの交流機会を作ってきた。その流れの中で、19年9月18日にFC町田ゼルビアと共同で「ARUCLUB MACHIDA(アルクラブ マチダ)」を始めた。小田急が開発したスポーツエンターテインメントアプリ「ARUCLUB」を使い、サポーターが歩いた歩数をカウント。参加者全員で規定の歩数に達すると、その目標達成を共有するイベントやサービスが提供される。

小田急電鉄の歩行運動アプリ「ARUCLUB」。参加者全員の歩数を表示してくれる

 複数の参加者から歩数(資金)を集めてリターン(分配)を得る。小田急電鉄はこの仕組みを「ウォークファンド」と呼ぶ。その初めてのプロジェクトが「ARUCLUB MACHIDA」だ。このアプリを起動して各自が歩数をカウントして、11月24日のシーズン最終戦終了までに1000万歩を達成したら、特急ロマンスカー「ゼルビア号」を運行すると約束した。これにサポーターたちは燃えた。67日間で1000万歩だ。

 厚生労働省の「健康日本21目標値」によると、日常生活による歩数の目安は男性9200歩以上、女性8300歩以上とのこと。間を取って1人が8600歩として、67日間で57万6200歩。1000万歩を達成するには18人が必要となる。計算上は簡単そうだけど、毎日それだけ歩く人はまれだろう。しかし、結果的には2カ月もたたないうちに達成したという。「ゼルビア号」の応募も多く、抽選はかなりの高倍率だったという。


ゼルビア号の運行告知(出典:小田急電鉄公式サイト

 実は「ARUCLUB MACHIDA」には、ウォークファンドとは別の特典も用意されている。FC町田ゼルビアのホームゲーム開催日(期間中は3日間)に、アプリを利用して鶴川駅から町田市立陸上競技場へ歩いて向かうと、1日4000歩を達成すれば、スタジアムで使える500円クーポンをプレゼント。3日間で4000歩を達成すれば、「ARUCLUB」のTシャツをプレゼントする。また、歩く楽しみを提供するため、歩数に応じてFC町田ゼルビアや町田市の観光情報を記載したカードが表示される。

 この機能はサポーターの健康を気遣うだけではなかった。実は、ホームゲーム開催時、町田市立陸上競技場周辺や鶴川駅周辺は渋滞しやすく、バスも遅れがちだという。そこで、積極的に歩いてもらい、マイカーの利用を抑制しようという狙いがある。バス路線を運行する神奈川中央交通バスは小田急グループだから気が気ではないと思うけれども、渋滞が減る方がうれしいのかもしれない。


鶴川駅と町田市立陸上競技場の位置(地理院地図を加工)

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