5月に期限が迫る銀行API 現状と課題をマネーツリーに聞く(4/4 ページ)
家計簿アプリの裏側を支えるスクレイピング。これが銀行APIに置き換わる期限が5月末に迫っている。しかし、その進捗は思わしくない。銀行APIの背景から課題まで、アカウントアグリゲーションサービスを提供するマネーツリーに聞いた。
――銀行APIの利用が普通になると、ユーザーにはどんなメリットがあるのでしょうか。
マグダット氏 われわれがうまく対応できれば、ユーザーから見ると何も変わりません。
参照系APIでは、今までやってきたことをAPIで実現するだけです。フェイズ1ですね。スクレイピングだと、銀行側のサイトに変更があったときにすぐに対応しなければいけませんが、長い目で見れば、ユーザーに対して安定的にサービスを提供できるようになるという利点はあります。
更新系APIが使えるようになると、お金を外部から動かすことができるようになります。でも私は例として、そこではないところを言っています。
例えば引越しをしたとき、新しい住所を使っている金融機関にまとめて届けることができるようになります。住所変更を受け付けするAPIが開発されれば、銀行のコールセンターや用紙を使わずに、新しい住所情報や免許証のコピーデータなどをまとめて送ることができます。複数のカード会社や銀行に同時に住所変更できるわけです。
銀行にとって、これは業務としてやらなくてはならない運用コストなのですが、住所変更の手続きにはビジネス上おいしいところはありません。更新系APIをうまく使うことで、コストカットになる面はたくさんあります。人ではなくAPIを使って、外部の事業者を使ってできるようになるわけです。
オープンイノベーションはどこから生まれるか分かりません。でも、どれも非対面認証で第3者とデータとやりとりができるのが大事な基盤です。ぜひ銀行はそこに投資してほしいと思います。
参照系APIでも、銀行が自行のAPIを使ってビジネスをするという可能性もあります。ホスト系で取引があったとき、クラウドにAPIでそれを渡して5分くらいの遅れでデータベースができあがるとします。クラウドなので安いデータベースです。
お金を引き出すときはリアルタイムでなければいけませんが、「今日の入出金明細が知れればいい」というニーズはたくさんあります。そうしたとき、メインフレームのホストシステムへの参照を減らして、オフロードするような需要はたくさんあるはずです。
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