「新型コロナには一致団結で!」と叫ぶ組織が、残念な結果を招く理由:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
新型コロナウイルスの対応について、各国から批判の声があがっている。クルーズ船に3711人を閉じ込めたこと、乗客を下船させたこと、公共交通機関で帰宅させたこと。日本には“優秀”な官僚や感染対策の専門家がいるのに、なぜこのような事態を招いてしまったのか。
壮絶にコケる組織
では、なぜ優秀な医療従事者や専門家が多くいて、そこら辺の国よりも感染対策のレベルも高いと言われる日本が「実戦」で惨めな結果を招いてしまったのか。
マンパワー不足、現場でのオペレーションがうまくいかなかった、そもそも緊急時の指針や体制が用意されていなかった……など既にさまざまな問題が指摘されているが、個人的には、現場で指揮にあたった人々が掲げた大方針が誤っていたことが最もマズかったのではないか考えている。
その大方針とは、「一致団結」だ。
なにかしら「危機」が発生したとき、「問題解決のために一致団結しよう」とか「全員野球で乗り切ろう」みたいな大方針を掲げる組織の危機管理は、ほぼ間違いなく失敗する。このように「和をもって問題解決にのぞむが壮絶にコケる組織」と同じにおいが今回の感染対策の現場からはプンプン漂ってくるのだ。
その中でも分かりやすい例が、ダイヤモンド・プリンセス号内部の感染対策がアフリカや中国よりもずさんだ、とYouTubeで告発した岩田健太郎氏に対する「バッシング」だ。ご存じのように、岩田氏のとったアクションについては現場を指揮していた政府の人間や、一部の専門家から否定的な意見が出た。
いわく、船内は適切な感染対策をしていたのに、わずか2時間程度で一部しか見てない部外者が不安をあおるようなことを言うな。いわく、仮に感染対策が不完全だったとしても、不安や疑念が交錯するときだからこそ一致団結していかなければいけないんだから、スタンドプレーで船内に潜り込んで一方的な批判だけするのはいかがなものか……など、中には岩田氏の「人格」を攻撃する人まで現れている。
これらの主張をまとめると要するに、「船内のずさんな感染対策」より、「現場の規律を乱した人間」のほうがはるかに大きな問題だというのだ。ただ、筆者に言わせれば、批判する者をマウンティングして黙らせようとするのは、危機管理に失敗する組織の典型的な末期症状なのだ。
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