「新型コロナには一致団結で!」と叫ぶ組織が、残念な結果を招く理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
新型コロナウイルスの対応について、各国から批判の声があがっている。クルーズ船に3711人を閉じ込めたこと、乗客を下船させたこと、公共交通機関で帰宅させたこと。日本には“優秀”な官僚や感染対策の専門家がいるのに、なぜこのような事態を招いてしまったのか。
「一致団結」が何よりも大事
このあたりをご理解していただくためには、そもそもなぜ「一致団結」を叫ぶ組織の危機管理が失敗するのかを分かっていただく必要がある。
この手の組織は、何よりも現場の「和」を重んじるあまり、誰の顔を立てて、誰の主張を採用して、なんて感じで内部の序列やパワーバランスで頭がいっぱいになって、「危機」を前にして本来やるべきことがおざなりになってしまう。これでまず、危機発生下のルールがグズグズになる。「現実には難しい」「原則はそうだが、実際はなかなか徹底できない」なんて感じで「できない理由」を並べていくのだ。
こうなると第2段階としては、体制批判を許さない空気が醸成されていく。「一致団結」の名のもとに、現場を統率するリーダーや発言権のある者など「権威」への意見を控えるようになるのだ。みんなが好き勝手に意見を述べたら収拾がつかなくなるので、ちょっとくらいの不満や批判はグッと腹に抑え込もうという組織内ムードが強くなっていくのだ。
そしてこういう組織は最終的にどうなるのかというと、隠ぺいや改ざんに走って、それがおかしいと声をあげたものの口を封じるようになるのだ。なぜかというと、「一致団結」が何よりも大事なので、その秩序を乱すような都合の悪い事実は、組織の総力をあげてクサイものにフタということになってしまうのだ。
つまり、「一致団結」を叫ぶことは、「組織論理を優先する」こととほぼ同義であるため、危機管理において最も重要な「自分たちが置かれた状況を客観的に俯瞰(ふかん)する」ことができなくなってしまうのだ。なぜそんなことが断言できるのかというと、このようなパターンに陥って、危機管理を失敗する組織を嫌というほど見てきたからだ。
これまで筆者は、報道対策アドバイザーとして、さまざまな問題企業の内部を見る機会があった。社長や幹部が招集され、どのような対応をするのか協議する「緊急対策会議」のようなものに参加し、意見を求められたこともある。
そのような仕事を十数年やってきて痛感しているのが、「一致団結」のワナだ。
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