目前に迫る「同一労働同一賃金」 最も“対応”が進んでいる業界は?:6割の企業が「対応あり」
帝国データバンクの調査によると、「同一労働同一賃金」の対応を進めている企業は59.2%。業界別にみると、「運輸・倉庫」が7割以上となった。
4月から始まる「同一労働同一賃金」制度。正規・非正規の労働者間の“不合理な待遇差”が禁止される。施行を目前に控えた今、どのくらいの企業で準備ができているだろうか。帝国データバンクが2月27日に発表した調査結果によると、約6割の企業が同一労働同一賃金への対応を進めている。
自社における同一労働同一賃金への対応状況について聞いたところ、「既に対応済み」「現在対応中」「これから対応する予定」を合わせた「対応あり」の企業は59.2%。最も多かったのは「これから対応する予定」で、31.7%だった。
一方、「対応していない(できない)」という企業は13.9%。「分からない」とする企業も26.9%を占めた。
「対応あり」の企業を規模別にみると、「大企業」が63.3%、「中小企業」が58.1%、「小規模企業」が48.3%だった。
業界別にみると、「対応あり」の割合が最も高かったのは「運輸・倉庫」で、72.3%となった。運送業の企業からは「同一労働同一賃金の考え方は、以前から運送事業では多くの事業者が導入している」といったコメントもあったという。「サービス」(67.5%)、「製造」(61.2%)も平均を上回った。一方、「農・林・水産」(45.1%)、「不動産」(49.8%)は対応が進んでいる企業の割合が低かった。
企業からは、「制度内容が複雑であり、対応に苦慮している」「企業の負担が増える。設備投資を控えるなどの対応が考えられる」といった不安や懸念の声や、「非正規の人材には同一労働同一賃金を嫌がる者もいて、個別対応が必要」「同じ仕事をしても工夫や努力によって他者より結果を出す人がいた場合、そういった人の意欲が失われる」など、制度に対する否定的なコメントもあったという。
調査は1月20〜31日に実施。調査対象は全国2万3665社で、有効回答企業数は1万405社。
関連記事
- 賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代
2020年は「同一労働同一賃金」制度が始まる。一方、厚労省が示した「均衡待遇」という言葉からは、正社員の賃金が下がったり、中高年のリストラが加速したりする可能性も見える。そんな時代の変わり目には、私たち自身も働き方と向き合い続ける必要がある。 - 月13万円で生活できるか 賃金を上げられない日本企業が陥る悪循環
米フォードの創業者はかつて賃金を上げて生産性を高めた。現代の日本では、海外と比べて最低賃金は低いまま。普通の生活も困難な最低賃金レベルでの働き手は増えている。従業員が持つ「人の力」を最大限に活用するための賃金の適正化が急務だ。 - 同一労働同一賃金、肯定派より否定派の企業が多数 「人件費がさらに上がる」「派遣の苦しい声だけを取り上げている」
同一労働同一賃金に関する調査結果が発表。調査結果では、肯定派より否定派の企業の方が多いと分かった。大企業では20年4月から対象となるが、対応済みの企業は少ないようだ。 - 2020年「正社員の年収激減」の恐怖 賃下げの意外なターゲットとは
2020年から正社員サラリーマンの年収が激減する恐れ。ポイントは同一賃金同一労働の施行だ。意外なモノが「賃下げ」のターゲットになる可能性が。 - 同一労働同一賃金がまだまだ日本で浸透しない、これだけの理由
2020年から開始する「同一労働同一賃金」。期待を集める一方で、“真”の意味で浸透していくにはまだまだハードルがありそうだ。どういったところに課題があるのか。しゅふJOB総研所長を務め、労働問題に詳しい川上敬太郎氏が斬る
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.