新卒向けサービスが多様化してもなぜ、「3年以内離職率」はずっと3割なのか:連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(1/4 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が新卒に関するサービスを解説する。
連載:「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?
2019年に波紋を呼んだ、就活サイトの内定辞退率予測問題。背景には、企業と求職者の間に立ちながら、自らの利益も追い求める民間業者ならではのジレンマが潜んでいます。人手不足で労働市場が活況を帯びる中、人材サービスの存在意義はどこにあり、何が課題なのか? という問いを新卒、転職、派遣の3つから分析します
「人材サービス」が有する“機能”にフォーカスしたとき、どんな存在意義があり、何が課題なのか。求職者側から見たニーズの違いから特徴的なキーワードを挙げて考察します。考察にあたっては、多岐にわたる人材サービスの中でも民間事業者が提供する労働力需給調整機能に絞って取り上げ、カッコ書きで「人材サービス」と表記します。
【プロローグ】人材サービスが“社会の敵”にならないために 運営側、企業側、求職者全てが知っておくべき基本事項
【転職編】活況の“転職市場”を支える「人材サービス」 企業が知るべきことと事業者が心掛けるべきこと
今回、取り上げるキーワードは新卒(新規学卒者)です。新卒にとって就職活動は、初めて社会との接点を持つ機会です。後で改めて触れますが、既に社会に出たことがある人が行う転職とは、その点が決定的に異なります。
中学生や高校生が行う就活は、ほとんどが学校を通します。そのため、ここでは「人材サービス」を利用して就活する層の中で最大ボリュームゾーンである四年制大学の新卒について考察したいと思います。以下、新卒や学生という言葉は四年制大学の場合を指します。
まだインターネットが存在していなかったころ、学生が行う就活といえば資料請求ハガキの送付でした。就活シーズンになると、電話帳のように分厚い就職情報冊子が何冊も送られてきて、掲載されている企業に何十枚、何百枚とハガキを出し続けます。しかし、インターネットが普及し就職ポータルサイトができると、学生はその重労働から解放されます。
厚生労働省の「平成30年雇用動向調査」のうち、新規学卒者の入職経路を見てみると、最も多いのは「学校」で33.6%。続いて求人媒体に相当する「広告」が32.7%、「職業安定所」の13.5%と続きます。
この統計には、中卒や高卒なども含まれているため「学校」の比率が高くなっていると思われます。「人材サービス」としては、社会人の転職と同様に求人媒体が最も大きい比率を占めているといえるでしょう。
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