新卒向けサービスが多様化してもなぜ、「3年以内離職率」はずっと3割なのか:連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(2/4 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が新卒に関するサービスを解説する。
最近は「脱就職ポータルサイト化」も進む
学生が就活で利用する求人媒体(広告)で最も大きいシェアを占めていると考えられるのが、リクナビやマイナビなどの就職ポータルサイトです。サービスが定着して以来、現在に至るまで、就職ポータルサイトの時代は続いています。しかし、ここ数年で新卒向け「人材サービス」は一気に多様化してきました。それら一連の動きを総称して、「脱就職ポータルサイト化」が進みつつあると見る向きもあります。
脱就職ポータルサイト化を推進する代表的なツールの一つが、「逆求人」と呼ばれるサービスです。通常は、学生側から希望する求人企業にコンタクトをとることで採用活動が始まります。逆求人型はその流れが逆になり、求人企業の方から学生のプロフィールを見てアプローチします。
この方式は、企業から直接に求職者である学生へ声をかけるので「ダイレクトリクルーティング」とも呼ばれています。就職ポータルサイトのように、採用基準に沿わない人も含めてエントリーを多数確保するのではなく、ピンポイントで採用基準にかなった学生とだけ接点を持つことができる点などが企業にとってのメリットです。学生としても、自身のプロフィールに一定の評価をしてくれた企業に絞って接点を持つことができるため、就活にかける労力を減らすことができるでしょう。
また、学生を対象とした人材紹介(エージェント)も最近は利用されています。人材紹介というと中途採用のためのサービスというイメージがありますが、「売り手市場」といわれる昨今、新卒採用でも利用されるようになりました。ただし、求人媒体に比べて割高なサービスである点は中途採用の場合と同様です。他にも、新卒向け「人材サービス」には、兼ねてから定番の一つである「就職イベント」や「採用代行」などもあります。それぞれ理系に特化したり、業界に特化するなど特徴的でユニークなサービスも提供されるようになってきています。
サービスのバリエーションが増え、選択肢が多様になっていることは学生にとっても採用企業側にとっても望ましいことだと思います。しかしながら、以前からずっと課題視されているデータがあります。
関連記事
- 「人材サービス」が“社会の敵”にならないために 運営側、企業側、求職者全てが知っておくべき基本事項
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が分かりやすく「そもそも」を解説する。 - 課長の平均年収は932万円、部長は? 外資との「格差」も明らかに
日本で活動する企業の報酬状況が発表。日系企業と外資系企業合わせて679社が参加した。調査結果では課長職や部長職の平均年収も明らかになった。日系企業と外資系企業の報酬格差も合わせて発表し、特に役職者以上で顕著な開きがあった。 - 同一労働同一賃金が招く“ディストピア”とは?――「だらだら残業」だけではない、いくつもの落とし穴
2020年から開始する「同一労働同一賃金」。期待を集める一方で、「だらだら残業」を助長したり、短時間で働く人の負担になったりと、さまざまな「落とし穴」も潜んでいるという。しゅふJOB総研所長を務め、労働問題に詳しい川上敬太郎氏が斬る - 退職しない、できない日本 「井の中の蛙」化で昇給額も低水準
アジア5カ国、地域で行った雇用実態の調査が発表。日本の昇給額は低水準だった。部長クラスの年収では、中国に2倍の差をつけられるケースも。昇給額も給与も低い理由の1つは退職しない、できない点に? - 少なすぎる残業に要注意! 組織を崩壊させる「粉飾残業」のあきれた言い訳と手口
2019年4月に施行された働き方改革関連法案で、大企業を対象に残業規制の強化がなされた(中小企業は20年4月施行)。すると、今までは多すぎた残業が、今度は少なすぎるという問題が起きているという。残業規制をかいくぐる悪質な「粉飾残業」とは?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.