投資信託も信託報酬ゼロへ 10年無料の野村、成功報酬の農林中金
株式や投信の販売手数料無料化に続き、いわゆるアセットマネジメントコストである投信の信託報酬にもゼロ化の流れがやってきている。野村證券は信託報酬0%の「野村スリーゼロ先進国株式投信」を打ち出し、農林中金バリューインベストメンツ「おおぶねグローバル(長期厳選)」は運用会社報酬を成功報酬型とする。
株式投資に対するコストゼロ化の流れが進んでいる。投資信託では大きく、販売時の販売手数料、運用時の信託報酬、解約時の信託財産留保額の3つのコストがあるが、それぞれが無料化しつつある。
販売手数料は、松井証券が2019年12月9日から無料化した。マネックス証券は12月13日から、SBI証券と楽天証券も12月16日から無料化に踏み切った。auカブコム証券も2020年1月14日から無料化し、ネット証券に限れば投資信託は購入手数料無料が普通になった。
投資信託の運用にかかる信託報酬は、「預けた資産の1%」など料率が決まっているが、こちらも無料化の流れが進みつつある。信託報酬は、販売会社と運用会社(委託会社)、信託銀行(受託会社)の3者で分け合う形となっており、「委託会社0.35%、販売会社0.7%、受託会社0.05%」などと目論見書に記載されている。
この3種類のコストをすべてゼロとし、信託報酬0%を打ち出したのが、野村アセットマネジメントが3月16日から取り扱う「野村スリーゼロ先進国株式投信」だ。
2030年12月31日まで信託報酬ゼロの野村スリーゼロ先進国株式投信
野村スリーゼロ先進国株式投信は、先進国株式指数のMSCI-KOKUSAIに連動するインデックスファンドで、つみたてNISAでのみ購入できる。申し込みは、野村證券のオンラインサービスでのみ受け付ける形だ。
信託報酬をゼロとするのは約10年後の2030年12月31日までだが、その後も信託報酬率は0.11%(税込)以下と、業界最低水準を目指すとしている。
運用会社の報酬を成功報酬とする農林中金「おおぶねグローバル(長期厳選)」
販売会社と受託会社の報酬は発生するものの、運用会社の報酬を成功報酬型としたのが、農林中金バリューインベストメンツの「おおぶねグローバル(長期厳選)」だ。こちらは、投資信託の基準価格をもとに、最高値を超えたときだけ、超過分の10%を成功報酬とする。
ファンドが値上がりしなければ運用報酬は発生せず、投資家が利益を上げたときだけその10%を報酬とするイメージだ。
株価ではなく企業価値に着目し、「持続的に企業価値を増大できる数少ない企業を見極めて投資」するアクティブファンド。北米、欧州、日本の企業から20〜30銘柄を厳選して長期投資を行う。4月1日から、SBI証券および楽天証券で取り扱い予定だ。
株式売買手数料ゼロの流れは投資信託報酬ゼロへ波及か
株式売買手数料無料化の流れは、米大手証券会社チャールズ・シュワブが19年10月に手数料撤廃を発表してから世界に波及した。国内でもSBIホールディングスを始め、楽天証券なども手数料無料は避けられないとしており、流れは止まらない。
投資信託でも、米大手投信会社のフィデリティ・インベストメンツが18年に信託報酬無料のインデックスファンドを提供しており、米国ではETFでも信託報酬ゼロのものも登場してきている。
投資に関わる各種コストがゼロに向かう中、投資家の負担は軽減され、投資しやすい環境が整ってきた。一方で、コストの引き下げは証券各社の収益を圧迫する。投資家からも、「サービスのクオリティに影響はないのか。販売会社が、手数料の高い投資信託の販売に注力してしまうリスクもある」と懸念の声も挙がっている。
今後、追随する運用会社が出てくるかが注目される。
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