トイレットペーパー買い占め元凶はデマだけか メディア報道に潜む「大罪」――データで迫る:消費者を本当に煽ったのは誰か(2/3 ページ)
新型コロナの余波でトイレットペーパー買い占めが。デマだけでない本当の元凶とは? メディア記事データや専門家の分析から迫る。
トイレットペーパーは「特別扱い」
一方、新型コロナと関係が薄いにもかかわらず、同様にデマのせいで買い占めが起きているとされる「おむつ」や「生理用品」については、トイレットペーパーのような急激な報道量の伸びを見せていない。メディアが、「デマで騒動になっている」としてトイレットペーパーを特に「特別扱い」で報じている様が浮き彫りになった。
こうしたWeb記事の報道のほとんどはデマをうのみにしているわけではなく、買い占めの異常さを強調したり、虚偽情報を打ち消そうといった内容が多いとみられる。ただ、図らずもそうした報道が読者のトイレットペーパーへの注目をマッチポンプ的に喚起してしまった可能性がある。
松本社長は「これらの記事の中でトイレットペーパーは、(同様に買い占め騒動が起きた1973年の)オイルショックの事例と並べられるケースが目立った。『デマと言えばトイレットペーパー』と、メディアが結び付けてしまっている影響もあるのではないか」と推測する。
消費者は「デマに惑わされているわけではない」
こうしたメディア報道が、買い占めのような異常行動につながっていくメカニズムは何なのか。情報行動やメディア効果などを研究する東京大学大学院情報学環・学際情報学府の橋元良明教授(社会心理学)は、「多くの人は現状では『デマ』に惑わされて惑乱(的な)行動に走っているのではない」と分析する。
「人は自分や家族の安全確保、生命維持が非常に大切であり、そのためには実際に身の回りで(トイレットペーパーなどを)入手できなくなる恐れがあれば、早めに確保するのが合理的行動」(橋元教授)。「(買い占めを)静観していても、(その結果)被害を受けるのは最終的に必要な物を手に入れられなかった自分だ」と考えることで、デマを頭から信じずとも買い占め行動に走ってしまっている可能性がある、という。
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