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「6年で売り上げ5倍」「売上高過去最高の54億円」 プロ経営者・メイ社長が明かす新日本プロレス躍進の秘密セルリアンブルーのプロ経営者【前編】(3/4 ページ)

新日本プロレスが絶好調だ。2018年度の売上高は過去最高の54億円。19年には米国ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで1万6000人を動員し、20年1月4日・5日には史上初の東京ドーム2日間も成功させた。その新日本プロレスの社長がハロルド・ジョージ・メイ氏。メイ社長は、サンスターの執行役員、日本コカ・コーラの副社長を経て、タカラトミーでは社長として業績をV字回復させた「プロ経営者」だ。就任後、海外進出などで新たな戦略を打ち出しているメイ社長に、今後の新日本プロレスの戦略や、プロ経営者から見た日本企業の課題などを2回にわたって聞く。前編では、新日本プロレスの躍進の秘密に迫る。

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V字回復の要因はビジネスモデルの転換

――ブシロードによる買収によって業績はV字回復し、売り上げが6年で5倍になるなど、メイ社長就任後も過去最高の売り上げを更新しています。右肩上がりの業績を実現している要因をどのように考えていますか。

 一番大きな要因は、現代的なビジネスモデルに転換したことです。興行のチケットとグッズの販売が大黒柱ですが、それに加えて動画配信サービス、海外へのテレビ番組の販売、スポンサー収入などが増えてきました。

――動画は世界に向けて発信しているのですか?

 動画は世界に配信しています。税込で月額999円のサービスで、会員数は約10万人です。大会は同時配信もしています。英語の解説もつけていますが、プロレスは、私が子どものころに体験したように「見るだけでも分かるスポーツ」であり、国境や言葉の壁を越えられると思っています。

 海外には動画配信だけでなく、大会自体もどんどん進出しています。19年は初めてオーストラリアとイギリスで大会を開催し、4月にはプロレスの聖地といわれているアメリカ・ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン大会も実現しました。1万6000席が19分で完売したと現地の報道で伝えられ、大きな話題になりましたね。19分での完売はエルトン・ジョンやマイケル・ジャクソンでもできなかったのではないでしょうか。日本のブランドが海外でも通用することが証明できました。

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プロレスの聖地といわれているマディソン・スクエア・ガーデン大会では1万6000席が19分で完売したと現地で報道された

――新日本プロレスは現在日本国内ではシェア1位で、世界でもアメリカのWWEに次ぐ2位だそうですが、海外展開を進める一方で、どのように「日本のプロレス」を伝える工夫をしているのでしょうか。

 海外でも日本語でリングアナウンスをしています。「青コーナー、◯◯センチ、◯◯キロ」と日本語で言うのが本物ですから、現地に合わせることはありません。だいたい言っていることは分かるでしょう。ファンも英語で直訳してほしいとは思っていないと思います。

 ただ、選手に関しては日本人が中心ですが、その国に響くローカルヒーローも必要です。オーストラリア人も、イギリス人も、アメリカ人もいます。現在所属するレスラーは約70人で、そのうち25人が外国人です。新日本プロレスのブランドイメージがよくなるほど、世界から選手も集まりやすくなります。

 社員も私が入社するまでは外国人が1人もいませんでしたが、現在は私も含め、イギリス、カナダ、オランダの3カ国で合わせて4人います。動画配信に英語の字幕をつけるほか、YouTubeやTwitterを英語でも発信するようになりました。

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新日本プロレスのTwitter

――海外展開していく上で難しい点はどんなところでしょうか。

 日本のプロレスには約50年の歴史があって、伝統やしきたりもあります。それを守りながらも、世界にアピールしていくためには、どうしても変える必要があるものも出てきます。例えば、選手が相手を挑発するときに行う、中指を立てるポーズは禁止しました。

――海外ではNGなのですか。

 日本では別に文句も言われませんが、海外では放送禁止です。選手が気まぐれに中指を立ててしまったら、その部分を編集でカットしないといけません。Fワードも、プロレスの試合の中といえども海外では許されません。選手を集めて説明しましたが、最初は抵抗もありました。ずっとやってきたことですから、本人たちにはこだわりがありますからね。そこを丁寧に説明して、理解してもらいました。

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累計約10万人を動員した2019年の「G1 CLIMAX」シリーズは日本武道館での3連戦で締めくくられた。優勝者は飯伏幸太

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