2020年に変わる3つのフィンテック関連法改正 Fintech協会理事の落合孝文氏インタビュー:フィンテックの今(1/4 ページ)
2020年はフィンテック関連でどのような法改正が進むのか。送金サービスを提供する資金移動業が3種類になり、1つの登録で証券、保険の商品などを販売できる「金融サービス仲介業」が登場。そして、給与を銀行振り込み以外で支払える、ペイロールカード解禁が想定される。
個人の資産運用を盛り立てたり、地方を活性化したりとさまざまな効果が期待されているフィンテック。ただ、フィンテックが効果を発揮するためには、関連する法律や制度の整備が欠かせない。2020年はフィンテック関連でどのような法改正が進むのか。Fintech協会理事で渥美坂井法律事務所・外国法共同事業の弁護士の落合孝文氏に聞いた。(聞き手はフリーライターの中尚子)
――2020年はフィンテックに関連する金融分野の法改正が相次ぐようですね。フィンテック協会も各省庁などに働きかけたようですが、どういうことを目指して活動してきたのでしょうか。
落合孝文氏(以下、落合) 金融取引の電子化を進め、顧客本位のフィンテックサービスを推進するための制度作りを目指しています。そのためには規制を緩和し、新規のIT技術を利用する事業者が参入しやすいような仕組みにすることが必要です。また、次々と生み出される新しい技術を使ったサービスをスムーズに提供できるような仕組みを作ることも必要でしょう。
送金サービスを提供する資金移動業が3種類に
――具体的にはどのように変わるのか、フィンテックに関わる2020年に予定されている金融関連の主な法改正について、教えてください。
落合 1つ目は、送金サービスを提供する資金移動業に関連する改正です。これまでは銀行以外で送金サービスを手掛ける資金移動事業者は、送金金額が100万円以下に制限されていました。20年の法改正では、こちらの送金サービスについて、
- 100万円超の高額送金を扱う事業者
- 改正前と同様に100万円以下の送金を扱う事業者
- 数万円以下の低額送金のみを扱う事業者
の3つに分けられることになりました。
EC(電子取引)の伸びやグローバル化などを背景に、デジタルな送金の需要が拡大しています。こうした需要に対応するために、フィンテックなど、銀行以外の事業者が低額から高額まで、より幅広く送金サービスを担えるようにするのが改正の目的です。これによって銀行以外のフィンテック企業も、高額なBtoCの送金や、BtoBの送金なども手掛ける余地が広がってきます。
扱う送金が高額な場合は、規制を厳しくしてリスクを抑える一方、低額の場合は規制を緩和して多くの企業が参入しやすくするように、金額によって、リスクに応じた新たなルールが設けられています。
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