2020年に変わる3つのフィンテック関連法改正 Fintech協会理事の落合孝文氏インタビュー:フィンテックの今(2/4 ページ)
2020年はフィンテック関連でどのような法改正が進むのか。送金サービスを提供する資金移動業が3種類になり、1つの登録で証券、保険の商品などを販売できる「金融サービス仲介業」が登場。そして、給与を銀行振り込み以外で支払える、ペイロールカード解禁が想定される。
――3つの事業者はそれぞれ、どのように規制されるのでしょうか。
落合 (1)の高額送金については、「どこに送金する」という指示を伴わない資金については預かることができません。(2)の100万円以下の送金については、事業者に預ける金額が100万円を超える場合は利用者に目的を確認し、目的が送金以外だった場合は返金しなくてはいけません。また、利用者から預かった資金については貸付に利用することは禁止されます。こうしたルールは、送金事業者への資金滞留リスクに対応する目的で盛り込まれました。
顧客から預かった資産の保全についても類型ごとに異なります。現在は保全方法の大半が供託で、保全に1週間ほどというルールになっていますが、(1)の高額の場合はこれを2営業日程度まで短縮することが求められる見通しです。
これは送金額が増加する中で、少しでも早く利用者の資産を保全し、事業者が破たんした場合のリスクを低減させるためです。一方、(3)の少額の場合については、保全のために供託など従来の方法をとらなくても口座を別にすればよい、とされています。
低額から高額まで、3つのライセンスを1つの事業者が取得することもできます。例えば普段からある程度の金額を預けておきたい、という利用者がいた場合、(1)のライセンスでは送金以外の目的で資金を預かれません。そのため(2)や(3)のライセンスで資金を預かり、高額の送金については(1)のライセンスで対応する、というケースも考えられるでしょう。
――逆に規制が厳しくなるケースもあるのでしょうか。
落合 フィンテックを普及させるためには消費者が安心して使えるような仕組みを作ることも求められます。例えば、資金決済法上、JR東日本のSuica(スイカ)のような先払いの仕組みを「前払式支払手段」と呼びます。こちらについては今回の法改正で不正対策のモニタリングが義務付けられました。
これまで、個人間で送金する際に利用する「割り勘アプリ」は、資産の保全義務などがない「収納代行」の事業者でした。ただ、実質的には送金だけが目的となっていることから、資金移動業者としての登録が求められることになります。
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