プライベートブランドの帝王「コストコ」が、成功している本当の理由:背景に「雑誌」(1/4 ページ)
米国で、プライベートブランドの売り上げが好調だ。2019年には前年比3.8%の伸びを示しているわけだが、その中でも好調なのが「コストコ」だ。同社はどのような戦略で、売り上げを伸ばしたのか。そのヒントに雑誌がある。
スーパーやコンビニでよく目にするようになった、プライベートブランド(PB)の商品。メーカーではなく、小売店や卸売業者が企画開発した商品をPBというのだが、近年そのビジネス成長に注目が集まっている。
米国では、消費者向けのPB商品の売り上げが好調だ。2019年には前年比3.8%の伸び率となり、メーカーが手掛けているナショナルブランドと比較すると、2倍の成長率になっている。多くの場合、PB商品は、一般的に知られている有名ブランドの商品より値段が安く設定されており、価格に見合った価値が消費者の間で支持されている。
そこで、米国では多くの企業がPBの開発に力を入れている。最近では、米大手小売店のTARGET(ターゲット)がPBのスポーツウエアを手がけることを発表したり、米最大手食品スーパーのKroger(クローガー)が自社ブランドから話題になっている植物性ミート食品を販売する予定だという。
だが、PBビジネスで最も成功しているのは、コストコだろう。自社ブランドの「Kirkland Signature(カークランド・シグネチャー)」は、18年の売り上げが390億ドル(約4兆3200億円、1ドル:110円換算)あり、米食料雑貨業界で断トツの売り上げを誇っている。
同社の看板商品とも言えるPBが好調なコストコだが、そのビジネスを支えているのは意外な物だという。実は、同社が毎月発行している会員向けの雑誌「Costco Connection」の存在が成功の背景にある。雑誌がビジネスにおいて重要な役割を担っているというのは意外に感じるが、たかが会員向けの月刊誌と侮ってはいけない。
出版不況と言われるこの時代に、「Costco Connection」は毎号約1430万部を発行している。新聞の折込み広告として日曜版に配布される小冊子などと並び、米国で4番目に多い発行部数となっている。例えば、日本で最も読まれている読売新聞でも約800万部ほどだから、とてつもないスケールの発行部数なのだ。
さらに、「Costco Connection」はインターネットでデジタル版を読むことができるのだが、わざわざ印刷されたものを会員に配布しているという。雑誌を手配する郵送料だけを考えても、かなりの額になりそうだ。
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