トヨタとNTTの提携 途方もない挑戦の始まり:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
トヨタ自動車とNTTが提携を発表した。豊田社長は、2018年のCESで「トヨタはモビリティカンパニーへと変わる」と宣言した。それを今トヨタは別の言葉で再定義しようとしている。「クルマは社会システムの一部になる」だ。そう見ると、情報インフラ企業としてのNTTと、人の移動インフラ企業としてのトヨタが協業することは、ある意味当たり前だろう。
協調と競争
もちろんこうした変革はトヨタだけが前進すればいいというものではない。日本全体のことを考えないと、世界とは戦えない。トヨタは自動車産業を通信産業とつなげるハブの役割を担おうとしている。
再び豊田社長の発言だ。
トヨタ一社では、NTTさんにこうして動いていただけなかったんではないかと思っています。多分私のバックに、もっといいクルマ作りをしようという連合軍が見えているんじゃないのかな(笑)
通信の世界にはNTTとKDDIという会社がありまして、FOMAとCDMAの2つの形式が競争をしてきたわけです。そうした競争をしてきた中で「利用料」はどんどんアフォーダブルなものになってきたわけです。これから5Gの時代を迎え、クルマも自動運転が実装される時を迎えるとなると、データ処理の部分に協調部分と、競争部分が出てくるんではないのかなと思います。
そういう意味では未来を創造するプロジェクトをNTTさんとやらせていただくことにより、今後、通信の世界もクルマの世界もオープンにいろいろな方々が入ってくるでしょう。(中略)「この指止まれ」ということをオープンにやることによって、同じ志や価値観を持った方々が集まって来られた先に、人中心のみんなが幸せになる未来が来るのかなと考えております。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答を行っている。
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