「人材派遣」は“不遇な働き方”は本当か? データと資料が解き明かす、知られざる実態と課題:連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(5/7 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。今回は、誤解の多い人材派遣について「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が解説する。
「派遣」という働き方が広く浸透しない理由
一方で、必要なときに必要な期間働く派遣社員は、1カ所に腰を落ち着けて長期安定的に働き続けることを前提にしてはいません。それは裏を返せば「不安定な働き方」だともいえます。また、派遣社員には有期雇用と無期雇用のケースがありますが、いずれにおいても契約が変わるたびに職場も変わる可能性があります。有期雇用の場合は、次の職場が見つかるまで収入が途絶えてしまうことになります。
1カ所の職場に縛られない自由度がある一方で不安定でもある。それが派遣という働き方の特殊性を表す象徴的な要素の一つです。そして、派遣社員として働くことを選ぶ人が、全雇用者の3%に満たない理由の一つでもあるでしょう。
また、派遣社員の賃金は、人材派遣業界黎明(れいめい)期に比べると相場が下がっている印象があり、働く側から見ると課題の一つです。20年4月施行の同一労働同一賃金関連法は、否定的な声も一部で上がっていますが、こうした賃金水準を向上させるきっかけとして期待されるでしょう。
一方、利用する企業側から見ると、人材派遣は今でもかなり割高なサービスです。
賃金相場が下がってきているとはいえ、パートやアルバイトと比較すると、派遣社員の賃金は高い水準にあります。さらにサービスを提供する派遣事業者のマージンを3割ほど上乗せするので、人材派遣を利用する企業に請求される派遣料金は、パートやアルバイトを採用するよりも基本的に割高になります。企業側からみた、派遣社員が全雇用者の3%未満にとどまっている理由の一つといえるでしょう。
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