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村上世彰に森永卓郎の長男が聞く――日本の経営者は自社の株主になるべきだ!白熱の経済論戦(2/2 ページ)

現在はシンガポールに住みながら、投資家として活動を続ける村上世彰氏。「N高等学校」の「N高投資部」の特別顧問に就任している。経済アナリスト・森永卓郎氏の長男で、自身も金融教育ベンチャー・マネネでCEOを務める経済アナリストの森永康平氏が、アクティビストの最近の動向についてインタビューした。

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アクティビストは株価を改善する

――最近はアクティビストに関するニュースを国内外で耳にする機会が増えてきました。例えば、米国では発行済株式を買い集めたアクティビストが、米Twitter(ツイッター)社を創業したジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)の更迭の可能性を含めた戦略変更を取締役会に要求したニュースが報じられて、ツイッター社の株価が急騰する場面もありました。

 そんなことがあったの。知らなかった。アクティビストは何でそんな要求をしたの?

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――アクティビストというのが米ヘッジファンド運営会社のエリオット・マネジメントなのですが、彼らはドーシーCEOがツイッター社だけではなく、モバイル決済サービス会社スクエアのCEO職を兼務している点を懸念しているようです。コロナの件もありますし、米国では大統領選挙などのイベントもありますから、1社の経営に専念してほしいとのことです。

 非常に正しい要求じゃないですか。でも、このツイッター社への要求はアクティビストの要求としては珍しいものだよね。一般的にアクティビストはお金を有効に使えと要求します。つまり資本効率を上げろということですね。

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――日本では未だにアクティビストというと「悪者」という印象を持つ人が多いですが、アクティビストのキャンペーンが起きると株価はポジティブに動くようになってきた印象です。

 アクティビストが入った方が株価への影響はよくなるでしょう。日本でももっとアクティビストは出てきますよ。PBR(株価純資産倍率)が1倍以下で放置されている上場企業がこんなに多いのはありえない。米国だったら買収されますよ。このような事象が起きるのは、つまり日本では経済のメカニズムが働いていないということなんです。一番分かりやすい例が株式の持ち合いですよ。未だに持ち合いをしている上場企業がある。

 日産自動車は(株価が)割安になっているけど、日本では放置されています。しかし、米国だったら買われてしまうんじゃないかな。しかも、買い手として出てくるのはトヨタ自動車とかになってくるわけです。

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役職員も株主になるべきだ

――日本は変われるのでしょうか。

 変わりますよ。コーポレートガバナンス・コードもできたし、アクティビストも増えるでしょう。でも、機関投資家がまだ意見表明しないんだよね。日本だとインデックス運用がかなり幅を利かせていると思うけど、彼ら(機関投資家)は株主総会で意見を言わないんです。それ自体がコストだから。でも、株主が意見を言わないといけないんですよ。

 もっと明確な条件なども設定した方がいいかもしれませんね。例えば、PBRが1倍以下の企業は買収防衛策を導入できないようにしたり、ROE(株主資本利益率)が何%以下の企業の提案には反対したりするなどです。

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――やはり米国が最も進んでいますか?

 そうですね、米国が一番進んでいます。欧州は米国と日本の間という感じですね。日本はまだまだです。でも、これには理由があります。米国や欧州は、経営者も従業員も株主になっていることが多く、報酬や退職金が株によって支払われることが多いんです。

 ESOP(Employee Stock Ownership Plan(=従業員による株式所有計画)の略で、企業が自社株を買い付けて、従業員に退職金や年金として分配する制度)といいます。投資先など、私が関わる企業には日本であっても、ストックオプションや従業員持ち株会などを導入するように提言していますよ。

 経営者と従業員も株主として意見を言うべきですし、そうやってガバナンスを利かせていくんです。そして、それが嫌だというんだったら、MBO(Management Buyout(=マネジメント・バイアウト)の略で、会社の経営陣が親会社・オーナーから株式・経営権を買い取って独立する手法のこと)して非上場にすればいいんです。

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著者プロフィール

森永康平(もりなが こうへい)

株式会社マネネCEO / 経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。

現在は複数のベンチャー企業のCFOや監査役も兼任している。

 著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)。日本証券アナリスト協会検定会員。Twitterは@KoheiMorinaga


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