「高級食パン」に「萌え断」 空前の食パンブームが起きたビジネス的“必然”に迫る:食の流行をたどる(1/4 ページ)
空前の食パンブームが発生している。筆者は“手の届く範囲での高級化”がポイントだという。どういうことか?
食の流行をたどる:
「レモンサワー」「一人焼き肉」「ギョーザ」「パンケーキ」「かき氷」――毎年のように新たなブームが生まれる。これらのブームの背景を、消費者のライフスタイルの変化や業界構造の変化も含め、複合的に分析していく。
今、空前の“食パンブーム”である。2斤で1000円以上する高級食パンが飛ぶように売れているだけでなく、カツサンド専門店や卵サンド専門店といった進化系専門店も増えている。
そもそもパンは、戦国時代にポルトガルから鉄砲とともに入ってきたといわれており、明治時代には庶民にも広がり始めたそう。第2次世界大戦後は、米国が支援物資として小麦粉を持ち込んだことで、給食にパンが登場。一気に日本にパン食文化が広まったとされている。このようにして、パンは朝食を中心に日本の食卓に当たり前に存在するものとなった。
「食パン」とは日本における呼称であり、大きな長方形の型に入れて焼いたパンのことを指す。食中に食べるパンの総称ともいわれるが、スライスしてそのまま食べたり、トーストしたり、サンドイッチにしたりして日常的に食されるパンだ。このようなスタイルのパンは、イギリスで生まれたともいわれており、“イギリスパン”とも呼ばれている。また、同じような焼き方をしたり、同じような材料の配合で作られたりしたものをフランスでは「パンドゥミ」と呼んだりする。
パンの種類は数あれど、食パンはいつでも、どこでも、手軽に手に入る逸品であり、おそらく日本では最も日常的に食べられているパンではないだろうか? なぜ今この食パンがブームなのか? 今回は、昨今の食パン事情とともにブームの背景を解説していきたい。
ポイントは“手の届く範囲での高級化”
では、この日常的に食されている食パンは、どのようなプロセスを踏んでブームになっていったのだろうか。
食パンブームをけん引した要因は2つあると考える。1つ目は“高級化”だ。いつでも、どこでも、気軽に手に入るものが高級化された商品は、大衆に愛されるため、ブームになる確率が高い。昨今は、通常であれば1斤100〜200円で気軽に購入できる食パンが、2斤で1000円前後で販売されており、専門店も続々とオープンしている。通常の倍以上の価格であるため、高価に感じるが、手に入らない価格ではない。“手の届く範囲での高級化”がブームをけん引するポイントである。
ではこの“高級食パン”の歴史はどのようになっているのだろうか?
高級食パンブームをけん引したのは、流通業である。2013年4月にセブン-イレブン・ジャパンが「金の食パン」の販売をスタートさせた。当時、食パンは1斤100円程度で購入できたが、この金の食パンは250円。通常の2.5倍の価格であるにもかかわらず好評で、結果的にセブンの食パンの売り上げは前年の1.6倍となった。これを皮切りに、スーパーマーケットなど流通業界では、PB商品として、高級食パンを次々に販売。売れ筋商品となったのだ。
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