1分1秒を争っているのに、なぜ政治家の仕事は遅くイライラするのか:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大によって、医療崩壊の危機が連日のように報じられている。こうした事態に対して、国民はどのように感じているのか。政府の対応は「遅い」「危機感がない」といった声が出ているが、なぜそのように感じるのか。筆者の窪田氏は、このように見ていて……。
目指している「ゴール」が違う
では、なんで日本政府はそんなにしてまで「調整」をしたいのかというと、自治体や医療現場が目指しているゴールと、政府が目指しているゴールに、微妙な温度差があるからだ。
ご存じの方も多いと思うが、首相をはじめとした政府内部で、感染拡大の収束と同じくらい重要視しているのが、「日本経済のV字回復」だ。安倍首相や菅義偉官房長官はことあるごとに、「経済V字回復させなければいけない」と繰り返しているし、実際に、今月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の中には、収束後に反転攻勢に向けた「V字回復フェーズ」なる文言がある。
しかし、実際に感染者が増加して、使い古しのマスクや防護服で戦う医療現場からの悲鳴をダイレクトに受ける自治体からすれば、そんなムシのいいなんちゃらフェーズなんて話は知ったこっちゃない。彼らが目指しているゴールは、目の前で苦しむ人々への救済や手厚い支援なのだ。
断っておくが、「V字回復」を目指してはいけないなどと言うつもりはない。国全体のかじ取りをする政府が収束後の「日本経済」の行く末を念頭に置くのは当然だ。そのため、国民生活や医療現場に近い自治体と考え方に温度差が生じるのも仕方がないので、これがけしからんなどとはまったく思っていない。
ただ、日本型組織の場合、1分1秒を争う緊急事態下で、目指すゴールが異なる人間たちの「調整」は「何も決めない」という問題先送りになりがちで、結局、そのツケを国民が払わされるパターンが多いことを指摘したいだけだ。
その最も有名で、分かりやすいケースが、先の戦争でポツダム宣言受託をなかなか決められなかった最高戦争指導会議だ。
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