1分1秒を争っているのに、なぜ政治家の仕事は遅くイライラするのか:スピン経済の歩き方(5/7 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大によって、医療崩壊の危機が連日のように報じられている。こうした事態に対して、国民はどのように感じているのか。政府の対応は「遅い」「危機感がない」といった声が出ているが、なぜそのように感じるのか。筆者の窪田氏は、このように見ていて……。
結論は出なかった
これは首相、外相、参謀総長、陸相、海相、軍令部総長の6名からなるもので、戦局が厳しくなった1944年8月に戦争に対する根本方針を策定する目的で設置された。当時の日本は南方などで負け続きで、国内も次々と空襲されていた。食糧不足で戦地では餓死する兵士も後を絶たなかった。どう考えても戦争を続けられる状況ではなかったが、この会議の「調整」は難航した。阿南惟幾陸相などは、近くソ連が参戦してくる情報をキャッチしていたが、それをこの会議にあげることさえしなかった。
なぜかというと、安倍政権がコロナ後の「V字回復」を想定したように、当時の陸軍省は「終戦交渉を有利に持っていく」ことを想定していたからだ。本土決戦で粘って相手に日本の強さを見せつけた上で、終戦交渉に入ったほうが天皇陛下への扱いなど、いわゆる「国体維持」ができると見込んだのだ。
そのあたりのスケベ心は、広島に原爆が投下され、ソ連が満洲に侵攻した後も変わらなかった。朝日新聞の副社長から初代内閣情報局総裁になった下村宏の『終戦記』によれば、長崎に原爆が投下された8月9日、阿南陸相はこんなことを述べている。
「原子爆弾、ソ連の参戦、これに対しソロバンずくでは勝利のメドがない。しかし大和民族の名誉のため戦い続けている中には何らかのチャンスがある。死中に活を求むる戦法に出れば完敗を喫することなくむしろ戦局を好転させうる公算もある」
「保障占領された後では口も手も出しようがない。先方のなすままとなる。統帥府の空気は私より強い。戦局は五分五分である。互角である。敗とはみていない」
こういう陸軍の「立場」を代弁する阿南陸相と、終戦派の東郷茂徳外相や、米内光政海相との「調整」がうまくいくわけがない。閣僚の多くはポツダム宣言受託に賛成したが、阿南陸相の考えに賛同する者も多くいた。結局、最高戦争指導会議で結論は出ることがなかった。
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