「人材サービス」に潜む危うさと罪 今後も社会に必要な存在であるために求められるものとは:連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(2/5 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。今回は、連載の最終回。「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が「人材サービス」が今後も生き残るためのカギを解説する。
「人材サービス」は“危うさ”を内包した存在
「人材サービス」を提供する者が、雇用責任などを伴う形ではなく、見えざる“支配力”によって一方的に働き手の意思をコントロールできてしまうと、不当なマージンを搾取して暴利をむさぼるような事態が生じやすくなります。そう考えると、「人材サービス」は構造的な“危うさ”を常に内包している存在だと言うこともできます。
これまで考察してきた「転職」「新卒」「派遣」それぞれのテーマにおいて、「人材サービス」の“機能”は一定の社会的有用性を保持していることを確認してきました。
「転職」においては、求人媒体の利用はすでに社会インフラの一部となっています。また、人材紹介は特にハイスキル・ハイキャリア層の採用や就職においてメリットのあるサービスです。
「新卒」においては、既に定番となっている就職ポータルサイトや合同就職説明会のようなイベントはもちろん、ダイレクトリクルーティングや新卒向け人材紹介サービスなどバリエーションが豊富になってきています。
「派遣」は全雇用者の3%に満たない特殊な働き方である一方で、必要なスキルを有した人材が必要なときに必要な期間だけ働く、というピンポイントのニーズに応えることができます。
これらの利点を有する「人材サービス」も、見えざる“支配力”が影響してしまうと、一気に不正の温床となり得ます。つまり、これまでの考察の中で何度も指摘してきたように、「人材サービス」を提供する側がエゴや悪意にもとづいてサービスを提供すれば、関係者全てを不幸にしてしまいます。
関連記事
- 「人材派遣」は“不遇な働き方”は本当か? データと資料が解き明かす、知られざる実態と課題
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。今回は、誤解の多い人材派遣について「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が解説する。 - 同一労働同一賃金が招く“ディストピア”とは?――「だらだら残業」だけではない、いくつもの落とし穴
2020年から開始する「同一労働同一賃金」。期待を集める一方で、「だらだら残業」を助長したり、短時間で働く人の負担になったりと、さまざまな「落とし穴」も潜んでいるという。しゅふJOB総研所長を務め、労働問題に詳しい川上敬太郎氏が斬る - 初任給18万円、かつ“職務経験”を考慮して決定 厚労省の「氷河期限定採用」は苦しむ世代の“氷山の一角”も救えない
厚生労働省が「就職氷河期世代採用選考」を実施する。2020年5月採用として、12月25日〜20年1月10日の期間で申し込みを受け付ける。一般行政事務職として、10人ほどの採用を予定する。初任給は「月額18.2〜27.4万円」で、職務経験により変動する。 - 「給与を上げれば退職者は減る」は本当か 経営層の考える「退職対策」と現場の乖離(かいり)が明らかに
「給与を上げれば退職者が減る」と考える会社役員は多い。しかし、給与の上昇は本当に退職率を下げる効果はあるのだろうか。トランスの行った調査で役員層と従業員の意識の違いが明らかになった。 - 課長の平均年収は932万円、部長は? 外資との「格差」も明らかに
日本で活動する企業の報酬状況が発表。日系企業と外資系企業合わせて679社が参加した。調査結果では課長職や部長職の平均年収も明らかになった。日系企業と外資系企業の報酬格差も合わせて発表し、特に役職者以上で顕著な開きがあった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.