「人材サービス」に潜む危うさと罪 今後も社会に必要な存在であるために求められるものとは:連載・「人材サービス」が滅ぶ日は来るのか?(3/5 ページ)
2019年、就活サイトの内定辞退率問題で注目を集めた「人材サービス」だが、今その公益性が問われている。しかしながら、ひとくちに「人材サービス」といっても、その実態はなかなか分かりづらいのが現状だ。今回は、連載の最終回。「人材サービスの公益的発展を考える会」を主催し、「人材サービス」に詳しい川上敬太郎氏が「人材サービス」が今後も生き残るためのカギを解説する。
「人材サービス」に罪はあるのか
採用したくもない人材を採用したり、良い人材だと思って採用したにもかかわらず事前情報にうそがあったりすれば、採用した企業にとっては「災難」です。
一方で、就きたくもない仕事に従事させられたり、良い企業だと思って就業したらブラックな職場だったりすれば、働き手はつらい思いをして追い込まれることになります。
明らかに悪意があるケースなどは言語道断ですが、「人材サービス」を提供する側に悪意がなかったとしても、営利企業として売り上げや利益の追求を優先する中で、いつの間にかエゴにとらわれてしまうことや、“支配力”を発動させてしまってダークサイドに堕ちることがあります。そうならないためにも、「人材サービス」に対する一定の規制は必要なのだと思います。
しかしながら、「人材サービス」の存在意義そのものを否定してしまうと、先に挙げた利点が失われてしまいます。罪は「人材サービス」そのものにあるのではなく、「人材サービス」を“悪用する者”にあるはずです。その点を明確に分けて把握しておかないと、対処策を誤る可能性があると考えます。
自動車を例に考えてみます。家族を送迎したり、買い物に行ったり、旅行に行ったりと、自動車は便利な乗り物であり、日本中の多くの家庭にとって、生活必需品ともいえる存在です。一方で、毎年多くの人が事故で命を失っています。警察庁が公表した「令和元年中の交通事故死者数について」によると、令和元(2019)年に交通事故で亡くなった方の数は3215人に及びます。
最も多かった昭和45(1970)年には、1万6765人と現在の約5倍の規模でした。統計に記されている昭和23(1948)年から令和元(2019)年までの72年間に、累計60万人以上の方が交通事故によって亡くなっています。家族や友人など、身近な人を交通事故で失った人の数となれば、さらにその何倍にもなります。
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