FacebookのLibraが、単一通貨のステーブルコインに方針転換
通貨バスケットを裏付けとして、価格の安定を目指していたFacebookのLibraが、それを断念。単一通貨を裏付けとする発行にかじを切った。また、将来の非中央集権化ブロックチェーンへ移行するという計画も破棄された。
Facebookが主導するデジタル通貨のLibraが、ドルなどの単一通貨を裏付けとする発行に方針転換する。従来の複数通貨を裏付けとしたコインの計画を放棄はしないが、当初の構想からは後退した。
Libra協会が新たに公開したホワイトペーパー2.0の中で明かした。また当初、パーミッションレス(非中央集権)のブロックチェーンへ移行していく計画だったが、これを断念。運営はLibra協会のメンバーのみが行うことになる。
Libraは、2019年6月に発表。世界各国の複数通貨(通貨バスケット)などを保有し、それを裏付けとすることで、価格が安定した、いわゆるステーブルコインを目指すとしていた(19年6月の記事参照)。しかし世界で27億人ものユーザーを持つFacebookが関わるプロジェクトであることから、各国の金融当局は警戒。マネーロンダリング対策や金融政策への影響の面から、厳しい態度を取った(19年7月の記事参照)。
当初は、決済事業者からNPOまで、世界的な企業や団体28社がLibra協会への参加を表明していたが、こうした状況の中、発行に向けた動きはトーンダウン。VisaやMastercardなどは脱退を表明し、「2020年内」としていた発行時期は難しいと見られていた。
今回、各国の要請に従う形で方向性を変更したが、Libraの特徴とされてきた部分のいくつかが失われた。単一通貨を裏付けとしたステーブルコインは既に複数存在している。また、パーミッションレスブロックチェーンへ移行しないのであれば、ブロックチェーンを使うメリットの1つが失われることにもなる。
一方で、現実的な路線への方向転換でもあり、何らかの形でLibraが発行できる可能性は増したともいえる。
ホワイトペーパー2.0で記された、主なアップデートは次の通り。
- 複数通貨を裏付けとしたコインに加え、単一通貨のステーブルコインも提供
- 堅牢なコンプライアンスフレームワークによりLibra決済システムの安全性を高める
- 将来のパーミッションレス(非中央集権)ネットワークを断念
- Libraリザーブの設計に強力な保護機能を組み込む
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