コロナ禍を機に考える「定年後の自分」 62歳元部長が地域で悪態をつき孤立する現実:コロナ禍を機に考える「定年後の自分」(1)(2/2 ページ)
「朝、店頭に並べない現役世代を尻目にマスクを買いだめする老人」「本当は在庫を隠しているのだろうと店員に食い下がる高齢男性」「列に割り込み、注意した人に暴力を振るう70代男性」……。今回のコロナ禍では日本全体が緊張感につつまれるなか、一部の高齢者による地域社会でのモラルが皆無な行動に対し、「暴走老人」などといった批判が生まれ、新たな火種となりそうな状況です。医学博士が、50代のうちに「定年後の自分」に早く向き合う必要性を事例とともにお伝えします。今回は、定年後に地域や家庭で孤立を深めていった男性の事例です。
小さな感謝の積み重ねが定年後の円満の秘訣
晴彦さんのように批判ばかりしていると、嫌われるのは当たり前です。些細(ささい)なことでも批判するのは絶対にやめたほうがいい。地域で存在感を示したいのであれば、地域のボランティアに参加して汗を流せばいいのです。マンションのごみ出しが気になるのなら、マンションの管理人か清掃の仕事を探せばいいのです。これなら感謝されます。
はじめは「こんなことできるか!」と見下していた定年者でも、ボランティアに参加してみると、経験したことのない清々(すがすが)しい気持ちになる人もいます。マンションの管理人として働いて住人たちとのコミュニケーションにやりがいを覚える人もいます。
悪態ばかりついていると、そのうち家族からも見放されてしまいます。このことが分かっていてもプライドが高くて、なかなか実行に移せない人は少なくありません。ならば、まず自宅のトイレを掃除してみてはいかがでしょうか。これなら時間もかかりませんし、奥さんから感謝され、悪態が減っていくと思います。
トイレ掃除なんてと思うかもしれませんが、企業のブランディング支援などを行うESSPRIDE(東京・渋谷)の「社長のパワーアップ・ゲン担ぎ」に関する調査によると、会社、自宅を問わず自分でトイレ掃除をする社長が7割もいました。風水でトイレは健康運や金運に関わるところで、掃除することで邪気が祓(はら)われ、運気が上がるとされているからでしょう。
松下幸之助も掃除の励行を重視し、自ら掃除の手本を示したエピソードが残っています。コロナ禍のいま、在宅勤務で自宅にいる時間が増えた人も多いと思います。トイレ掃除というのは極端な事例かもしれませんが、掃除という作業自体は、自分を見つめ直すいいきっかけにもなります。たまには掃除や整理整頓をしながら、「定年後の自分」を考えてみるのもいいのではないでしょうか。
――「定年後の自分」を考えるヒント――
- 会社でダメ出しばかりしてきた者ほど、定年後は地域や家庭でクレームを出しやすい。存在感を示したいのであれば、地域活動など、人から感謝されることをすることを考える。
- 地域活動やボランティアをする自分の姿が想像できない人は、例えば自宅のトイレ掃除や整理整頓を習慣にしてみるといい。自分を見つめ直すきっかけにもなるし、家族からも感謝される。
著者プロフィール
高田明和(たかだ あきかず)
1935年静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。医学博士。米国ロズエル・パーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を歴任後、現在同大学名誉教授。専門は血液学、生理学、大脳生理学。日本生理学会、日本血液学会、日本臨床血液学会評議員。脳科学、心の病、栄養学、禅などに関するベストセラーを含む著書多数。最近はマスコミ・講演で心と体の健康に関する幅広い啓蒙活動を行っている。自身もうつやHSP(超敏感気質)に長年苦しみ、HSPを扱い紹介した『敏感すぎて困っている自分の対処法』(監修、きこ書房)は日本での火付け役となり、話題を呼んだ。最近の著書に『「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本』『HSPとうつ 自己肯定感を取り戻す方法』『HSPと発達障害 空気が読めない人 空気を読みすぎる人』(いずれも廣済堂出版)がある。
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