コロナ不況を乗り切るために「コンビニバイトの時給アップ」が必要なワケ:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大によって、「コロナ不況がやってくるのではないか」といった声が出てきた。そうした状況のなかで、筆者の窪田氏は「コンビニバイトの時給をあげるべき」と主張する。どういう意味かというと……。
セブン&アイの「ノープラン発言」
こうした考え方がそこまで荒唐無稽でないことは、大手スーパーやドラッグストアの対応を見れば分かっていただけることだろう。
例えば、首都圏や近畿に275店舗展開のスーパー「ライフ」を運営するライフコーポレーションは、パートやアルバイトを含めた全従業員約4万人に対して総額約3億円の「緊急特別感謝金」を支払うと発表した。ドラッグストア「スギ薬局」を全国で約1300店舗展開するスギホールディングスも、パートやアルバイトを含む全従業員約2万6000人にボーナスを支給した。
イオンでも、緊急事態宣言の対象地域となる7都府県のスーパーや物流施設などで働くアルバイトやパート従業員10万人に、特別手当として一律1万円を支給した。しかし、イオンとしのぎを削るセブン&アイホールディングスからはこのような現場の支援策は聞こえてこない。4月9日、20年2月期通期決算を公表。その場で井阪隆一社長は、コロナの影響を受けるセブン-イレブン店舗への追加支援策についてこのようにおっしゃった。
「今の段階では考えていないが、長引くようなら対策を検討しないといけない」
このノープラン発言に筆者はちょっと驚いた。コンビニに限らず、小売業の位置付けがコロナパニックの前と後でガラリと変わっている。コンビニを日本中に広げた「流通の王者」ならば当然、それに対応する術を考えていると思っていたからだ。実際、ウォルマートやアマゾンでは続々と「賃上げ」や雇用拡大に取り掛かっており、「小売業」という仕事のイメージも大きく変わってきている。
例えば、アメリカの「デジタルマーケティング戦略」情報サイト、DIGIDAY.com の日本版によると、労働者支援団体ターゲット・ワーカーズ・ユナイトで調整役を務めるアダム・ライアン氏がこんなことを言っている。
「この仕事をしていると、小売の仕事など仕事のうちに入らないと耳にすることがよくある。こうなる前は、とくにそうだった」「我々が必要不可欠な労働者になったいま、一般大衆や顧客だけでなく、労働者自身の考えも変わったように思う」(4月7日)
このように社会や労働者の意識が変わっているのだから、経営者側も変わらなくてはいけないことは言うまでもない。
バイトが低賃金・重労働で苦しんでいても、これまでセブン本部としては、「雇っているのはコンビニオーナー」と他人ヅラができた。しかし、コロナパニックで「小売=インフラ」となっている今、そういう無責任なロジックは通用しない。「コンビニは社会インフラ」と事あるごとに訴えてきたのは他でもない、セブン自身だからだ。
窮地に立たされたとき、はじめてその人間の本性が分かる。それと同じでコロナパニックによって、日本社会が抱える問題がこれ以上ないほど残酷なまでに浮き彫りになった。それは我々の社会が「低賃金・重労働」を強いられる人々で支えられている現実だ。
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