原油が驚異のマイナス価格、次に危ないのは不動産?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
WTI原油先物の5月限価格の終値は、史上初めて“マイナス”37.63ドルで引けた。ただし、注意しておくべきは、今回のマイナス価格はあくまで「WTI原油先物」だけで発生したものであり、全世界の原油の価値が突如マイナスになったというわけではない。また、原油以外にもマイナス価格増加に注意すべき資産がある。それは不動産だ。
前回の連載に続き、今回も原油マーケットが市場参加者の話題をさらうこととなった。米国で取引されている、WTI原油先物の5月限価格の終値は、史上初めて“マイナス”37.63ドルで引けた。この原油先物の購入者は、投資金額を全て失っただけでなく、1バレルあたり37.63ドルを追加で支払うということになる。
ただし、注意しておくべきは、今回のマイナス価格はあくまで「WTI原油先物」だけで発生したものであり、全世界の原油の価値が突如マイナスになったというわけではない。現に欧州のブレント原油先物の価格は、5月限分を9.06ドルで引けている。同じ原油であるにもかかわらず、なぜ米国のWTI原油先物だけがマイナスになってしまったのだろうか。
今回は、原油先物の特徴やマイナスになった背景を確認した上で、次のマイナス価格が危ぶまれる資産クラスは何かを検討していきたい。
保管コストが原油価値を上回る
原油先物は、「商品先物」の一つだ。商品先物は、日経225先物などに代表される「指数先物」と異なり、現物の受け渡しを伴う「受渡決済」という決済方式がある。今回のWTI原油先物も、決済時には本物の原油が受渡決済されるものだ。
原油先物は、石油会社や商社といった実需による取引参加者も多い。このような取引参加者に原油の受け渡しを行うためには、貯蔵設備を用意して、決済まで原油を保管する必要がある。
貯蔵タンクの運用にはそれなりの費用がかかるため、受け渡しまでに長い時間がかかるほど、保管コストが膨大になるという特徴がある。つまり、決済期限が先になればなるほど、保管コストを加味した、高い先物価格が提示される傾向がある。
図表は、WTI原油先物の価格を限月(受け渡しの日付)ごとに示したグラフである。22日現在の20年6月限が11.57ドルであるのに対して、31年2月限は53.19ドルとなっている。
このように、未来ほど価格が高い状態のグラフを「コンタンゴ」という。決済期限が遠くなるほど現物の保管コストは高まる。そのため、決済期限が遠いほど、先物価格は高くなる傾向にある。
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