原油急落……「1リットル15円」でもガソリンスタンドが大幅値下げしないワケ:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/2 ページ)
原油相場が暴落している。わずか3カ月の間に3分の1となった原油価格。しかし街のガソリン価格はそれほど値下がりしていない印象だ。資源エネルギー庁によれば、4月8日時点のレギュラーガソリンの小売価格相場は124.9円だった。
原油相場が暴落している。2020年1月8日に、一時1バレル=65.62ドルを付けた原油相場は、14日現在、およそ3分の1の水準となる22.60ドルで推移している。これをリットル換算すると、原油1リットルの価格は円換算で15.30円となっている。
わずか3カ月の間に3分の1となった原油価格。その分だけ石油会社の原価が安くなったように思われるが、街のガソリン価格はそれほど値下がりしていない印象だ。資源エネルギー庁によれば、4月8日時点のレギュラーガソリンの小売価格相場は124.9円だった。
図表は、WTI原油相場と、国内のレギュラーガソリンの小売相場を比較したものである。今年の年初を100とおき、4月14日までの騰落率を示している。これをみると、年初から原油相場が63.64%下落したのに対して、ガソリンの小売価格は年初から14.04%の下落にとどまっている。
仮に仕入れ値が大幅に安くなったにもかかわらず、ガソリン価格を据え置きにする動きがあれば、消費者保護などの観点から問題となるだろう。では、日本の石油会社は原油とガソリンの価格差拡大によって暴利を得ているといえるのだろうか。
この点について、今回はガソリン価格を決定づける上で重要な「税金」と「在庫」について検討したい。
ガソリン価格は税負担が重い?
まず、ガソリン価格が下がりにくい最大の要因は税金にある。ガソリン関係の税金は消費税のようにパーセンテージで算出されるのではなく、定額の税金が規定されている。
石油会社にとって、最大の負担となっているのが、いわゆる「ガソリン税」だ。これは、ガソリン1リットルあたり53.8円を課すものだ。他にも、化石燃料に対して課される「石油石炭税」が2.8円かかる。また、化石燃料が排出する温室効果ガスに対して支払われる「温暖化対策税」0.76円も課される。これらは石油会社が支払うべきものだが、最終的な負担は当然消費者に転嫁されるものだ。
つまり、ガソリンの小売価格は原油価格の変動に関係なく、最低でも57.36円の税金分だけカサ増しされていることとなる。最新の小売価格124.9円のうち、残りの67.54円のなかで会社はやりくりしなければならない。原油1リットルから取れるガソリンは0.2リットルである(なお、原油からはガソリン以外の燃料も同時に精製させる)。それを考えると、石油会社も採算ギリギリのラインで顧客にガソリンを販売していることがうかがえる。
ここまで考えると、「原油相場が下落したにも関わらず、石油会社がガソリンの価格差で儲けている」という批判は妥当ではないだろう。むしろ、原油価格が下がっても一定の税収が得られる政府こそが、相対的に見れば“儲かっている”といっても差し支えないのかもしれない。
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