原油が驚異のマイナス価格、次に危ないのは不動産?:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/3 ページ)
WTI原油先物の5月限価格の終値は、史上初めて“マイナス”37.63ドルで引けた。ただし、注意しておくべきは、今回のマイナス価格はあくまで「WTI原油先物」だけで発生したものであり、全世界の原油の価値が突如マイナスになったというわけではない。また、原油以外にもマイナス価格増加に注意すべき資産がある。それは不動産だ。
原油の次は「マイナス不動産」に警戒?
今回は原油先物がマイナス価格となって注目を集めたが、原油以外にもマイナス価格増加に注意すべき資産があると筆者は考える。それは不動産だ。
上記で検討した通り、原油価格マイナスの背景には、原油の価値を上回る保管コストがある。この構図によく似た事例が多いのが不動産だ。物件の価値よりも、物件を維持したり、解体したりするために必要な費用が上回ることがあれば、不動産もマイナスで取引される。
実は、不動産価格がマイナスになることは、今ではそれほど珍しくなくなってきた。バブル期に人気を博した伊豆等の別荘地では、別荘の値段をマイナスにしても買い手がなかなか付かない例もあるようだ。
2018年末には、地方公共団体保有の土地が初めてマイナス価格で払い下げられた。これは埼玉県深谷市の事例で、旧市立中瀬小学校の体育館が建設されていた1500平方メートルの土地がマイナス795万円で落札されたものである。
当時は、市から特定個人への利益供与ではないかという疑念の声も一部ささやかれた。しかし、市は土地を利用開始するために、体育館を解体する費用を価格に組み入れた。その結果、市は推定の解体費用込みで算出した当該土地の価格をマイナス1340万6000円とし、入札を募ったのだ。その結果、市の試算に545万6000円上乗せしたマイナス795万円で落札されたのだ。
資産といえばプラスのイメージがつきがちだが、将来的に発生する出費やキャッシュフローを考えた取り引きが必要だ。一見価値があるものも、トータルで見た収支を最大化する上では、お金を払ってでも手放した方が賢明な場合もあるということだ。
コロナ禍の影響が長期化してしまえば、個人経営の店舗や旅館を中心に多くの店舗が廃業を余儀なくされてしまいかねない。その結果、不動産についてマイナス価格取引が増加する可能性があるといえるだろう。
筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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