中高年引きこもり61万人の衝撃 62歳独身男性が「定年を機に引きこもる」現実:コロナ禍を機に考える「定年後の自分」(3)(2/2 ページ)
今回のコロナ禍では日本全体が緊張感につつまれるなか、一部の高齢者による地域社会でのモラルが皆無な行動に対し、「暴走老人」などといった批判が生まれ、新たな火種となりそうな状況です。一方で、高齢者がなぜそのような行動に走るのかを、自分の将来の姿に重ね合わせながら考えるきっかけにもなった人は多いのではないでしょうか。今回は、定年を機に家に「引きこもるだけ」の毎日を送る男性の事例です。
チャレンジから新しい世界が開けることもある
哲夫さんは定年後の生活に満足していますが、週に何日か数時間のアルバイトで構いませんので働いたほうがいいでしょう。年金受給まであと3年ありますし、老後の資金が1800万円では大病したときや、親の介護が必要になったときに不安です。からだを動かすことにもなりますから、少しは運動不足の解消にもなりますし、アルバイト先での人間関係ができれば、いくらか認知症の予防にもなります。料理するのがイヤなら、せめてスーパーで総菜を買うときに栄養のバランスを考えて選ぶようにしてください。
本当にやってみたかったことにチャレンジするのもおすすめです。お金がかかりすぎることでなければ、何でも構いません。哲夫さんの場合、家族もいませんし、アルバイトを始めたとしても、定年前よりは時間の余裕があるわけですから、思う存分チャレンジできます。そうすることで思いもよらなかった世界が開けることもあります。
私の知り合いに定年後は若いころの夢である小説家を目指した人がいます。はじめは全ての時間を執筆に充てるつもりでしたが、人間観察のために妻との時間を大切にし、地域のコミュニティーにも入りました。すると執筆よりもこちらのほうが面白くなり、いまでは小説家になる夢は諦めましたが、充実した生活を送っています。
――「定年後の自分」を考えるヒント――
- 中高年の引きこもりのもっとも多い理由は「退職」による環境変化。決して他人事と思うべきではない。
- 中高年の引きこもりは、敏感な気質(HSP)が影響を与えていると考えられる。人は誰でも愛されたいし、優しくされたいし、認められたいものだ。それが感じられない場合は、自ら関係を断ってしまい、自分の殻に閉じこもりがちになることを理解する。
著者プロフィール
高田明和(たかだ あきかず)
1935年静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。医学博士。米国ロズエル・パーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を歴任後、現在同大学名誉教授。専門は血液学、生理学、大脳生理学。日本生理学会、日本血液学会、日本臨床血液学会評議員。脳科学、心の病、栄養学、禅などに関するベストセラーを含む著書多数。最近はマスコミ・講演で心と体の健康に関する幅広い啓蒙活動を行っている。自身もうつやHSP(超敏感気質)に長年苦しみ、HSPを扱い紹介した『敏感すぎて困っている自分の対処法』(監修、きこ書房)は日本での火付け役となり、話題を呼んだ。最近の著書に『「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本』『HSPとうつ 自己肯定感を取り戻す方法』『HSPと発達障害 空気が読めない人 空気を読みすぎる人』(いずれも廣済堂出版)がある。
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