「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」 まさかの新説は本当か:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
アメリカやフランスの研究チームが、ちょっと信じられない研究結果を発表した。「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」というのだ。まさかの新説の裏に何があるのか。
トンデモ科学なのか
桂歌丸さん、志村けんさんなど、ヘビースモーカーがCOPDや肺炎になりやすいことはさまざまな研究によって明らかにされている。ということは、人工呼吸器が必要になるほど急速に悪化する新型コロナ肺炎でも、喫煙が大きな影響を与えていると考えるのが自然だという研究者が圧倒的に多いのだ。
では、フランス発の「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」というのはトンデモ科学なのかというと、現時点ではそう断言することは難しい。新型コロナについてはまだそれほど研究も進んでいないので、もしかしたらということだってあるだろう。
田辺三菱製薬が買収したカナダのベンチャー、メディカゴがタバコの葉を「バイオリアクター」のように用いて、新型インフルエンザのワクチンを大量生産する手法の開発を進めているように、タバコ葉の成分にも医療へ応用できそうなものもないことはない。ならば、ニコチンにも何かしらの効果があってもおかしくはない。
ただ、研究への評価はさておき、「喫煙者は新型コロナにかかりにくい」という話に関してはかなり危ういものを感じている。データを都合のいいように解釈することで、ある特定の人々の利益につながる結論へと誘導しているように見えなくもない。つまり、いわゆる、スピンコントロール(情報操作)の可能性もあるからだ。
ご存じのように今、世界の愛煙家とタバコ産業は未曾有の危機に直面している。いつ収束するかも分からない謎のウイルスによる重症化の原因が「喫煙」だという研究が世界中から次から次へと発表され、WHOや各国の保健当局が「タバコを吸うな」と呼びかけている。これまでにない「大逆風」である。
そんな世界的バッシングを少しでも和らげようとする人々がいたら、彼らはどうするだろうか。「喫煙が新型コロナを重症化させるなんてうそだ!」と声高に叫んだところで袋叩きにあうのがオチだ。となれば、残る施策はひとつしかない。喫煙には確かにリスクはあるが、メリットもある。つまり、新型コロナ感染に対しても、何かしらの効果があることを訴求するのだ。
関連記事
- 世界一規律正しい日本人が、「外出自粛」の呼びかけを無視するワケ
「不要不急の外出は控えてください」――。政府、自治体、医療関係者などが何度も訴えているのに、なぜ日本人は外出してしまうのか。筆者の窪田氏はマスコミの報道に原因があると見ていて……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 飲食店でタバコを吸えなくなっても、“開き直りおじさん”が増える理由
4月、改正健康増進法が全面施行される。これによって、飲食店などでも原則禁煙になるわけだが、筆者の窪田氏はちょっと気になることがあるという。愛煙家を追い込むことによって、「開き直り喫煙おじさん」が増えるというのだ。どういう意味かというと……。 - 日本社会から「単身赴任」がなくならない、根本的な理由
「4月から転勤することになったよ」と嘆いているビジネスパーソンもいるのでは。家族を残して「単身赴任」する人もいるだろうが、そもそもなぜこのような制度が存在しているのだろうか。歴史をさかのぼると、根深い理由が存在していて……。 - 登山家・栗城史多さんを「無謀な死」に追い込んだ、取り巻きの罪
登山家の栗城史多さんがエベレスト登頂に挑戦したものの、下山中に死亡した。「ニートのアルピニスト」として売り出し、多くの若者から支持を集めていたが、登山家としての“実力”はどうだったのか。無謀な死に追い込まれた背景を検証すると……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.