ゲートボールがeスポーツに? 衰退する競技、“再生”に「若者」が欠かせない理由:激減する競技人口(4/4 ページ)
高齢者が楽しむスポーツの代表格だったゲートボール。近年は衰退の一途をたどる。国産スポーツを再び盛り上げるため、eスポーツへの参入、偏見のない若い世代の取り込みなどが行われており、世代をこえて楽しめるスポーツとして少しずつ広がりを見せている。
毎月1000人が退会している
ただそうした特徴は、人口減少や核家族化の進行を底流とした「個性尊重の時代」に入ると敬遠されるようになり、昭和二桁世代の愛好者が増えない理由にもなった。ゲートボール連合によると、登録会員の85%は70歳以上。加盟する愛好者は1980年代の60万人超を頂点に減り続け、2016年には初めて10万人を割り込み、その後も毎月約1000人が退会する状況が続いている。その原因の大半は、愛好者の年齢構成が70歳以上に偏っていることにあり、是正が急務となっている。
同連合の再生に向けた取り組みの陣頭指揮に当たっているのは、担当理事の町田光氏だ。アメリカンフットボールのNFLが日本での展開を目指して設立したNFL JAPAN株式会社の元社長で、スポーツビジネス界では名前の知られた存在でもある。
町田理事は、ゲートボールだけでなく、多くの競技型スポーツで衰退が不可避の状態と指摘する一方、「価値観の多様性が進む時代、スポーツの在り方も多様化し、社会の分断を埋める存在として、人々のコミュニティー作りや居場所作りの機能が求められる」と強調。高齢者から子どもまで、体力差にかかわらず楽しめるゲートボールは今後普及する可能性があると力説した。これまでに培ってきた国際大会の運営ノウハウなどの蓄積もあり、潜在力は高いと感じている。
町田理事はゲートボールの可能性について、「核家族で育ち、同質性の高い学校という居場所しかない子どもたち。彼らがゲートボールを介して、多世代とふれあえる将来をつくりたい」と話している。
著者プロフィール
甲斐誠(かい・まこと)
1980年、東京都生まれ。現役の記者として、官公庁や地域活性化、文化芸術関連をテーマに取材、執筆を重ねている。中部・九州地方での勤務経験あり。
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