周回遅れだった日本の「自転車ツーリズム」 訪日客を呼び込む“切り札”となるか:6県を通る1400キロのルートも(1/4 ページ)
遅れがちと指摘される日本の自転車政策が動き出した。外国人観光客の需要などを見込んで「ナショナルサイクルルート」が創設される。お手本は、自転車客誘致に成功した「しまなみサイクリングロード」だ。サイクリングを楽しめる環境づくりは進んでいくのか。
日本にも国際水準のサイクリングロードを――。
海外に比べ、遅れがちと指摘されることもある日本の自転車政策。それが最近になって、大きく動き出した。外国人観光客の呼び込みに自転車旅行が有効なツールとなり、地域ビジネスにもプラスの効果があるという認識が広まってきたためだ。
政府が訪日外国人4000万人達成を目標に掲げたこともあり、海外で人気が高い「自転車ツーリズム」を推進する必要は急速に高まっている。てこ入れを図るため、政府は2019年度中にも、国際水準の自転車道を国が指定する「ナショナルサイクルルート」制度を創設する方針だ。
6県にわたる1400キロのルートも
そもそも政府が構想するナショナルサイクルルートとは一体何だろうか。厳密な基準は有識者検討会で専門家が議論している最中だが、安全で快適に走れる100キロ以上の自転車道であることが最低限求められる。
すでに候補となるモデルルートが各地で36カ所設定されている。例えば、北海道の石狩川の河川敷を走る「石狩川流域圏ルート」や山梨、静岡両県にまたがる「富士山一周サイクリングルート」(仮称)などだ。千葉県銚子市から神奈川、静岡、愛知、三重の4県を横断し、和歌山市までを結ぶルートとして整備が進む「太平洋岸自転車道」(約1400キロ)や、琵琶湖を1周する「ビワイチ」(約200キロ)も関係者の間では有名だ。旧筑波鉄道の廃線跡地を活用した「つくば霞ケ浦りんりんロード」(約180キロ)でも、周辺でスポーツバイクの貸し出しサービスが始まるなど、積極的な利用者誘致の取り組みが進んでいる。
このほかにも、北海道から沖縄まで各地で、官民でつくる協議会が国際水準のサイクリングロードとして将来認められることを目指し、モデルルートを続々と設定し始めている。
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