周回遅れだった日本の「自転車ツーリズム」 訪日客を呼び込む“切り札”となるか:6県を通る1400キロのルートも(2/4 ページ)
遅れがちと指摘される日本の自転車政策が動き出した。外国人観光客の需要などを見込んで「ナショナルサイクルルート」が創設される。お手本は、自転車客誘致に成功した「しまなみサイクリングロード」だ。サイクリングを楽しめる環境づくりは進んでいくのか。
背景に「しまなみ海道」の成功
背景には、外国人観光客誘致にサイクリングロードが役立つことが証明された経緯がある。実証したのは、広島県尾道市から瀬戸内海の島々を縦断し、愛媛県今治市に至る「しまなみサイクリングロード」(約70キロ)だ。
案内標識や休憩施設などを地道に整えてきたことに加え、美しい景観を眺めつつサイクリングが楽しめるスポットとして、人気が高まっている。米CNNテレビの旅行サイトが「世界7大サイクリングルート」に選ぶなど、海外メディアで大きく取り上げられたこともあり、利用者数が近年急上昇。12年の約17万人から、15年には約33万人に増加した。地元企業によるレンタサイクルの貸し出し台数も増加基調で推移しており、地域活性化の好事例となっている。
瀬戸内の離島はそれぞれ、知名度の高い景勝地や娯楽施設が少なく、観光客誘致や地域振興に苦戦していた。排気ガスや騒音の少ない自転車に乗った観光客が徐々に増えることは、地元にとってもプラスの側面が大きい。沿線には自転車と宿泊できるスタイリッシュなサイクリスト専用ホテルができ、デザイン性にこだわる国内外の感度の高い観光客からも好評を博している。
国内屈指の成功例となった背景には、瀬戸内海の青い海を見下ろしながら、新緑の島々を横切ることのできる来島海峡大橋などがルート上にあるという「地の利」もあるが、自転車を持ち込めるサイクルトレインやサイクルバスの運行、自転車修理ポイントの設置など、自転車ツーリズムを盛り上げるための地元側の手厚い支援もある。
【訂正:2019年7月31日11時30分 橋の名称を修正しました。】
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