周回遅れだった日本の「自転車ツーリズム」 訪日客を呼び込む“切り札”となるか:6県を通る1400キロのルートも(3/4 ページ)
遅れがちと指摘される日本の自転車政策が動き出した。外国人観光客の需要などを見込んで「ナショナルサイクルルート」が創設される。お手本は、自転車客誘致に成功した「しまなみサイクリングロード」だ。サイクリングを楽しめる環境づくりは進んでいくのか。
欧州で見た、驚きの自転車政策
こうしたサイクリングロードの設定は、愛好家だけでなく一般人からも一定のニーズがあったが、政府はなかなか思い切った政策に踏み出せずにいた。
一方、海外ではすでに取り組みが進んでいる。政府の自転車活用推進本部によると、欧州連合(EU)では、「Euro Velo」と呼ばれるサイクルルートの認定が07年から始まっていて、直近では14路線計約7万キロに達している。自転車大国として知られるドイツ(12ルート、約1万2000キロ)やオランダ(約20ルート、約6000キロ)でも、民間団体などが主導する形で選定が進められてきた。台湾でも、島を1周する「環島」に自転車で挑む人が増えていることから、約990キロのサイクリングロードが15年に設定されている。
筆者も以前、欧州を訪れた際、日本と比べて大きく進んでいる自転車政策に驚かされた。ドイツの自転車都市として知られるミュンスターでは、自転車専用道が街の大半の道に存在している上、専用信号の設置など、安全に走行できるための工夫が随所にこらされていた。例えば、巻き込み事故防止のため、自転車の信号待ちゾーンは車の前方に設けてあり、駅前の地下に3000台以上の収容が可能な大規模駐輪場も整備されている。
第ニ次世界大戦からの復興期に、都市内部に入り込む車を極力減らし、「歩行者に優しいまちづくりを心掛けた結果」と、地元の行政担当者は説明していた。街の中心部から車を排除することで商店街を歩行者が安全に散策しやすいようにし、石畳の風景も保全できたという。そこで、車の代わりの移動手段として重宝されたのが自転車だった。安全な走行レーンが設けられているせいか、街を行き交う自転車の速度が日本よりも速いように感じた。
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