アメリカで白熱する「お尻洗浄器」市場、なぜ?(3/4 ページ)
日本では「ウォシュレット」は「クリネックス」と同じくらいごく当たり前のものになっている。しかしアメリカでは、「お尻洗浄器=温水洗浄便座」を見ることは家庭でも公共のトイレでもごくまれだ。しかし……
商機を掴め! 新興ビデ・メーカーの躍進
「コロナ特需」と呼ぶのは不謹慎かもしれませんが、アメリカの温水洗浄便座/ビデメーカーの売り上げは軒並み急上昇中です。
2020年3月期のコーラーの売り上げは前年の8倍。ビデのオンラインブランド、オーマイゴー(Omigo)は12倍。同じくネットで自社ブランドのビデを販売するトゥッシー(Tushy)は10倍の売り上げを記録しています。
急騰する需要に応え、いかに、商機を掴むか。経営陣が討議に討議を重ねたうえでのトゥッシーの決断は、「ビデを中国から空輸する」ことでした。
空輸には通常の3倍のコストがかかります。少しでもダメージを軽減するために、急遽、デザイナーと相談してパッケージをより小さくするよう工夫を施しました。コンテナで運ぶほうがもちろん安上がりですが、製品が中国から太平洋を渡りアメリカに届くまでは3カ月間がかかります。それでは、需要に応えることができず、せっかくの好機を逃してしまいます。
もともと店舗流通を主とするコーラーなど従来型メーカーは急騰する需要に応えることができませんでした。しかし、トゥッシーやオーマイゴ―といった「ネット直販」の会社は、サプライ・チェーンの調整を素早く行い、見事に商機を手にしています。
「ネット直販」のブランドの特徴として、顧客獲得のためにマーケティングに莫大な経費を費やすという性質があるのですが、コロナショックをきっかけに、アメリカの生活者のビデに対する関心が自ずと高まったため、通常は広告宣伝に費やしているお金を代わりに中国からの輸送コストに費やすことができたのです。
もちろん、割高な輸送コストが利ざやに食い込んでいることは否めませんが、今、生活者の需要に応え、一人でも多くの人にビデを届けることが先決、と考えたのです。ビデを一度使った人は、「エヴァンジェリスト」になる傾向があるといいます。一度使ってもらえば、そこから何倍もの口コミが期待できるという算段です。
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