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コロナ危機が日本企業の非合理な“ムラ社会”を確実に破壊する訳“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)

非合理な面もあった日本企業の“ムラ社会”。筆者はコロナ危機で崩壊する可能性を指摘する。終身雇用の終焉や「ムダな社員・職場」の顕在化が進む。

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 今回のコロナ危機では、社会のあちこちで従来型価値観からの転換が起こっている。最たるものは会社と個人の関係だろう。日本の「カイシャ」というのは、表面的には合理性に基づいて作られた組織に見えるが、その内実は前近代的なムラ社会だった。

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緊急事態宣言後も通勤客でごった返す東京・品川駅(4月20日撮影、ロイター提供)

企業と社員の「共依存」消滅へ

 これまでは、たとえ理不尽なことがあっても、会社が自分を守ってくれるという安心感があったが、そうした共依存関係はもはや消滅したといってよいだろう。これからは自分が会社に対して何を提供し、いくらの対価を受け取るのかドライに考えていく必要がある。

 戦後の日本において政府が行う経済対策というのは、ほぼ100%企業支援を意味していた。日本では建前上、終身雇用ということになっているので、会社が労働者を一生涯支えてくれる。労働者は何も考えず、会社の指示に従ってさえいれば、それなりの生活を送ることができたわけだが、その代わり、会社からの指示は絶対だった。

 終身雇用を維持するためには莫大な人件費がかかるので、当然、昇給は抑制される。日本人の賃金が安い理由の1つは、終身雇用を維持してきたことである。個人の生活を無視した転勤などが日常的に行われるのも、構成員が半永久的に入れ替わらない組織では、強制的な異動を行わないと不正が発生しやすいからである。

 このような雇用制度である以上、個人の生活を守るのは企業なので、政府による経済支援のほとんどは企業に集中していた。実際、右肩上がりで経済が成長していた昭和の時代までは、企業を守っていれば、自動的に国民の生活を守ることができた。

企業が生活保障しない「非正規」

 だが、こうした日本型雇用というのは、基本的に成長が続かない限り維持できない。平成に入って日本経済の低迷が深刻化したことで、日本型雇用の歪(ゆが)みが露呈する結果となった。増え続ける人件費を捻出できず、賃金が圧倒的に安い新しい労働者カテゴリーを作ることで企業は人件費の増大に対処するようになったのである。具体的には「非正規社員」である。

 非正規社員の数は、2000年代から顕著に上昇しており、今では民間企業はもちろんのこと、公務員の世界にまで拡大している。現在、多くの役所で窓口対応をしているのは正規の公務員ではなく、役所に雇われたり、派遣会社から派遣されている民間の非正規労働者である。

 非正規社員はあくまで雇用の調整弁なので、企業を通じた生活保障の対象には入らない。そうなってくると、企業を支援していれば、国民の生活を守れるという従来の常識が通用しなくなる。

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