コロナに苦しむ飲食店の“救済”に格差 カリスマシェフが指摘する重大問題:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/6 ページ)
新型コロナの影響に苦しむ外食産業。家賃支援に関する与野党の法案が出そろったが、政府の対応が遅いので連鎖倒産の可能性を指摘する声も出てきた。
「3店以上」が経営難に陥る可能性
与党案は、売り上げが前年より5割以上か、3カ月平均で3割以上減った中小企業に対して、月50万円、個人事業主なら月25万円を上限に、家賃の3分の2を支給するのが骨子。家賃に地域差があるので、自治体に予算を付け、足りない分を補完する。
松田氏は「与党案だと、1〜2店を経営している個人事業主なら救済されるでしょう。しかし、3店以上を出しているところは厳しいです。1企業ではなく、1店につきなら、まだ分かるのですが……」と顔を曇らせる。
国の支援は、手続が面倒過ぎるうえに審査に時間がかかり、給付も遅すぎるものの、持続化給付金や雇用調整助成金などがある。
持続化給付金は、ひと月の前年同月比の売り上げが50%以上減少している中小の法人に対して200万円、個人事業主に100万円を支給するものだ。
また、雇用調整助成金は、雇用主が雇用を維持した場合に、休業手当の費用を助成する制度。緊急対応期間として4〜6月は、売り上げなどが直近1カ月5%以上低下していることを条件に、パート、アルバイトも含めた。1日1人あたり8330円を上限(1万5000円に引き上げられる見込み)に、中小企業は5分の4、大企業は3分の2を助成する。解雇しなかった場合は、中小企業が10分の9(特定の条件を満たせば全額)、大企業は4分の3に引き上げられる。
さらに、自治体によって異なるが、東京都には感染拡大防止協力金があり、都の要請に応じて休業や時短に取り組んだ中小事業者は、1店を経営していれば50万円、2店以上は100万円が支給される。
これらを組み合わせれば、2店まで経営している場合には、十分ではないかというのが松田氏の見立てだ。しかし、3店以上のチェーンの経営難は免れられない。
エッグスンシングスの場合、店舗の大半は商業施設に入っている。商業施設が休業していれば店を開けられず売り上げはゼロだ。4月に関しては、多少テークアウトやデリバリーの需要があったが、前年比で9割もの売り上げを失ってしまった。
原宿の本店は路面店だが、新しい生活様式に従って、店内1階の卓数を8から2に減らすなどして、テーブル間の距離を広く取るように変えた。さばける人数が限られており、行列ができても、もとの売り上げを取り戻すのは、非常に難しい。
「都心部の場合、1カ月の家賃が300万〜400万円もざらで、与党案で押し切られては、支援金をもらっても焼け石に水だ」と、松田氏は困惑している。
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