コロナに苦しむ飲食店の“救済”に格差 カリスマシェフが指摘する重大問題:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)
新型コロナの影響に苦しむ外食産業。家賃支援に関する与野党の法案が出そろったが、政府の対応が遅いので連鎖倒産の可能性を指摘する声も出てきた。
地方や郊外と都心部では事情が異なる
「私の周囲にある、東京のほんの一部、港区界隈(かいわい)で、もう150軒の飲食店が潰れています。国の持続化給付金などの支援もありますが、面倒な手続をして審査を受け、払い込まれるまで、もう間に合わないお店も多いです」――。飲食店の窮状をこう訴えるのは、「HAL YAMASHITA」オーナーシェフの山下春幸氏。同店は「禅 ZEN」をテーマにした創作和食で高い評価を得ており、山下氏は世界の一流シェフが集まる「ワールド・グルメ・サミット」に2010年、12年に日本代表マスターシェフとして参加。10年にシンガポールで開催された際には見事、世界ベストシェフに選出された。
山下氏は、「飲食店舗への補償を求める嘆願書」を東京都の小池百合子知事に提出するべく、インターネットで署名を集める「飲食未来の会」の代表発起人だ。同会は発起人に、オールケッチアーノ代表取締役の奥田政行氏、ラ・ロシェル総料理長の川島孝氏、麺屋武蔵代表取締役の矢都木二郎氏、銀座山の辺オーナーシェフの山野辺仁氏ら人気レストランの代表者16人が名を連ねており、5月1日に発足した。
飲食未来の会では、(1)家賃に特化した80%以上の補助、(2)通常の給与に準じた85%以上の補償と手続の簡素化の2点を求めている。署名者数の総計は9636人(5月17日現在)に上り、1万人に迫っている。1万人に到達したら、小池都知事に嘆願書を提出する。
東京ミッドタウンにある「HAL YAMASHITA」本店も、東京ミッドタウン自体が緊急事態宣言を受け、4月8日から休んでいるため、それ以降の店舗売り上げはゼロである。
持続化給付金はひと月の前年同月比の売り上げが50%以上減少している中小法人に200万円、個人事業者には100万円給付されるが、「地方・郊外と、六本木のような都心部では事情が異なることを考慮してほしい」と、山下氏は語る。
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