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コロナに苦しむ飲食店の“救済”に格差 カリスマシェフが指摘する重大問題長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)

新型コロナの影響に苦しむ外食産業。家賃支援に関する与野党の法案が出そろったが、政府の対応が遅いので連鎖倒産の可能性を指摘する声も出てきた。

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ミシュラン3つ星レストランも危機感

 「大阪をはじめ、近畿ではコロナ関連でもう178軒の飲食店が倒産しています。帝国データバンクに掲載されるのは、ある程度の規模がある企業だけ。全国67万軒の飲食店のうち、1万軒くらいは潰れているのではないか」――。そう危機感をあらわにするのは、大阪のミシュラン3つ星レストラン「Hajime」オーナーシェフの米田肇氏。2009年には、オープンして1年5カ月と最短で3つ星を獲得して世界を驚かせた、日本を代表する革新的なフレンチのシェフだ。

 米田氏は、3月29日から発起人の1人となって「Chage.org」上に、「新型コロナウイルスの影響による飲食店倒産防止対策を求めます」というページを立ち上げ、オンラインによる署名活動を行っている。反響は大きく2日で署名者数は5万人を超えた。5月18日の時点で、14万人弱の署名が集まっている。


独創的な「Hajime」の料理(出所:Hajime公式Webサイト)

 その実績も踏まえ、3月31日には自民党の岸田文雄政調会長に、飲食店の窮状を陳情。その後も、農林水産省、文部科学省、参議院会館を訪問。世耕弘成参議院幹事長、菅義偉官房長官にも面会するなど、積極的に活動している。

 一方で、Hajimeも4月8日から休業に入っていたが、5月21日には新しい生活様式を踏まえて営業を再開する。再開にあたり、入店時には手洗い、アルコール消毒、検温を行い、テーブルの間隔を十分離して、同居してない人同士は横並びに座ってもらうなど、感染予防に万全を期す。しばらくはインバウンドの顧客は期待できず、もとのように集客するのは難しいと覚悟している。

 米田氏が心を痛めているのは、東京・練馬で起こったとんかつ店の店主の焼身自殺事件だ。

 「飲食店のオーナーシェフは、料理をつくるのは上手でも経営には疎く、請求書が届いて封を開けてみて、どうしたらいいのかと青ざめるのです。飲食店は一般に1.5〜3カ月分しか、内部留保を持っていません。売り上げが激減して支払うお金がないと、死を選ぶ人も出てきます」

 米田氏は、「日本政府は飲食店に自粛を要請して、『営業をしないでください、補償はしません』と言ってきました」と憤る。海外ではロックダウンと、飲食店の家賃補償・税免除はセットとなっている。国民に外出を控えるように命じる一方で、飲食店も安心して休めるようになっている。ドイツでは補償を申請して2日後には、銀行口座に振り込まれる。英国でも1週間程度である。

 ところが日本は、政府が国民に配るマスク2枚すら、東京都23区などごく一部を除き、満足に配られていない。

 しかし、ここに来て、家賃補償問題も与野党の協議へと進む段階に入り、雇用調整助成金も緊急対応期間に増額になっているので、光が見えてきたと米田氏は語る。

 家賃に関しては、小規模な店は家賃補償、チェーン店は家賃猶予のほうが良く、両案ともに法制化されることを期待している。

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