家の中でも管理職のように振る舞い、嫌われる65歳元大手電機メーカー役員のリアル:コロナ禍を機に考える「定年後の自分」(5)(3/3 ページ)
今回のコロナ禍では一部の高齢者による地域社会でのモラルが皆無な行動に対し、「暴走老人」などといった批判が生まれ、新たな火種となりそうな状況です。医学博士の高田明和氏が、50代のうちに「定年後の自分」に早く向き合う必要性を事例とともにお伝えします。今回は、定年後に地域や家庭で孤立を深めていった男性の事例です。
コロナ禍による在宅勤務で振り返る「家庭内管理職」
また、ある大企業の営業本部長で、息子が中学受験に失敗したため、進んだ中学での部活を禁止し、勉強だけの生活を送るように命じた知り合いがいます。やがて息子は不良になり、定時制高校に進んで卒業後に就職してしまいました。
いくら会社で優秀な人であっても部下は他人です。このことは『定年を病にしない』でも書きましたが、自分の出世を左右する人の言うことは我慢して聞いてくれるものです。それで部下が育ったとしても、部下と同じように子どもに接してもダメなのです。出世した教育者でも、家庭内管理職の人はめずらしくはありません。
これから則之さんは奥さんと過ごす時間が増えるわけですから、まずは奥さんに対して、すぐに家庭内管理職をやめるべきです。そうすれば息子さんとの関係も少しずつ変わり、修復に向かうかもしれません。コロナ禍による在宅勤務で自宅にいる時間が多かった方で思い当たる方は、これを機に考え直してみるといいかもしれません。
――「定年後の自分」を考えるヒント――
- 会社での地位は、定年後の自分には関係なくなるものと理解する。定年後に過去の肩書を捨てず、自慢げに経歴を話したり、管理職のように振る舞ったりすれば、周囲の反感を買うだけで、尊敬されることはない。
- 家庭内管理職では妻子に嫌われてしまうばかりか、子供の人生をも狂わせてしまいやすい。家族に対して上司のような言動をとるのは厳禁と肝に銘じる。
著者プロフィール
高田明和(たかだ あきかず)
1935年静岡県生まれ。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。医学博士。米国ロズエル・パーク記念研究所、ニューヨーク州立大学助教授、浜松医科大学教授を歴任後、現在同大学名誉教授。専門は血液学、生理学、大脳生理学。日本生理学会、日本血液学会、日本臨床血液学会評議員。脳科学、心の病、栄養学、禅などに関するベストセラーを含む著書多数。最近はマスコミ・講演で心と体の健康に関する幅広い啓蒙活動を行っている。自身もうつやHSP(超敏感気質)に長年苦しみ、HSPを扱い紹介した『敏感すぎて困っている自分の対処法』(監修、きこ書房)は日本での火付け役となり、話題を呼んだ。最近の著書に『「敏感すぎて苦しい」がたちまち解決する本』『HSPとうつ 自己肯定感を取り戻す方法』『HSPと発達障害 空気が読めない人 空気を読みすぎる人』(いずれも廣済堂出版)がある。
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