木製腕時計をつくった会社に、なぜ3000万円超の資金が集まったのか:北欧スタートアップ「ヴェアホイ」(5/5 ページ)
新型コロナの感染拡大を受けて、多くの会社で売り上げが低迷している。そんな状況のなかで、達成率5000%と予想をはるかに超えて支援額が伸びている、海外発のクラウドファンディングプロジェクトがある。それは……。
「ものづくりに近道はない」日本とデンマークに共通する美学
強力な助っ人となった日本人パートタイマーたちとともに臨んだ3回目のクラウドファンディングでは、天然の桜の木を使った新作モデルを世界に先駆けて日本で先行発売した。
「これは2017年の春に京都、広島、東京を訪れた際、現地で満開の桜にインスピレーションを受けて、創作を決めました。わずかな期間で散ってしまう桜の儚(はかな)い美しさに魅了されると同時に、ものづくりの信念や自然を愛する心など、日本と北欧との共通点についても再確認する旅となりました。
私は、日本の職人たちが持つ細部へのこだわり、完璧を追求する姿勢を心から尊敬していますし、北欧のミニマリズムの哲学に通じる点があると思います。だからこそ、多くの北欧デザインが日本人のみなさんに愛されているのでしょう」(ヤーヌス氏)
より洗練されたデザインを実現し、かつ代理店を通さずコストを抑えることに成功した今回のプロジェクトは、過去最高の結果に。開始わずか1日で目標金額の60万円を達成し、ヤーヌスをはじめ社員たちは歓喜に包まれたという。
「私たちのプロダクトは、やはり日本のみなさんに受け入れてもらえているのだと確信できました。とてもワクワクしていて、1日も早くみなさんにお届けしたい気持ちでいっぱいです」(ヤーヌス氏)
「私たちは派手さよりも、天然の素材を用いてシンプルな中に美しさを見出すデザインを追求しています。最高品質を求めるならば、決して近道は存在しません。
ものづくりにおける私たちの哲学は、日本のみなさんの洗練された感覚や好みに非常に近いのではないかと感じています。
今のところ、ヴェアホイは時計に焦点を当て、新作のデザイン制作に注力しています。今後も私たちの命とも言える『独創性のあるNordicCool なデザイン』を追求し、お金を払う価値のあるプロダクトを提供していきます」(ヤーヌス氏)
デンマークをはじめとした北欧には、20年3月に日本に初上陸したフードデリバリー「Wolt」や世界最小クラスの折りたたみイスが人気の「Sitpack」など、じわじわと日本に進出するサービス、プロダクトが目立ち始めている。際立つデザイン性やテクノロジーを武器に、日本市場を攻める北欧発スタートアップの今後に注目したい。
関連記事
- 入居待ち6500人! デンマーク発のコンテナ住宅が熱望される理由
デンマークの首都コペンハーゲンに、6500人もの学生が入居待ちをしている大人気の賃貸住宅が存在する。コンテナを使った集合住宅だ。なぜコンテナ住宅に住みたいと思っている学生が多いのかというと……。 - 「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
渋谷駅から徒歩5分ほどのところに、ちょっと変わったカプセルホテルが誕生した。その名は「The Millennials Shibuya」。カプセルホテルといえば安全性などを理由に、男女別フロアを設けるところが多いが、ここは違う。あえて「男女混合フロア」を取り入れているのだ。その狙いは……。 - 電動スクーター「ブレイズスマートEV」は、なぜ3000台以上も売れているのか
名古屋市に本社を置く自動車ディーラーのブレイズが開発した電動スクーター「ブレイズスマートEV」が注目を集めており、売れ行きも好調だ。人気の秘密を取材したところ……。 - なぜカシオの「余り計算機」は、いまの時代でも売れているのか
調剤薬局や物流会社の倉庫では、電卓で余りを計算することが頻繁にあり、効率化が求められていた。このようなニーズから生まれたのが、カシオ計算機の「余り計算電卓 MP-12R」だ。特定のユーザーを対象にした専門的な機能を搭載したニッチな電卓の、誕生までの歩みを追った。 - なぜ「スーツみたいな作業着」をつくって、しかも売れているのか
スーツのような作業着「WORK WEAR SUIT(ワークウェアスーツ)」が売れている。製造しているのはアパレルメーカーでもなく、作業着メーカーでもない。水道工事などを行っている会社がつくったわけだが、なぜこのような商品を開発したのか。その狙いを聞いたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.