木村花さんへのヘイトを煽ったフジテレビは、「無罪放免」でいいのか:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演中だったプロレスラー、木村花さんが死去した。彼女を死に追いやったと言われている「ネットリンチ」は、なぜ起きたのか。番組を制作していたフジテレビに責任はないのか。
視聴者の関心をひくための「おいしいネタ」
報道によれば、木村さんへの誹謗中傷は今年1月から増えていったというが、「死ね」「消えろ」などの目を覆うような罵詈雑言が寄せられるようになったきっかけは、3月31日配信の番組(第38回)だという。
この中で、木村さんは大切にしていた試合用のコスチュームを洗濯機の中へ忘れてしまい、それを知らない男性出演者が洗濯・乾燥をさせて縮ませてしまう。思い出がたくさんつまったコスチュームということもあって木村さんは、この男性の帽子を跳ね飛ばすなどして大激怒。この彼女の言動が放映されたことで、”アンチ”が急増していったのである。
では、フジテレビと番組制作を請け負うイーストエンターテイメント側が木村さんに向けられる人格攻撃をやめさせるように何かしらの対策をとっていたのかというと、残念ながら現時点ではそのような情報はない。むしろ、煽っていたと見えてしまうような痕跡があるのだ。
テラスハウスはYouTubeチャンネルで未公開映像を投稿しているのだが、木村さんが亡くなる9日前の5月14日に『“コスチューム事件”その後』という動画をVol.1からVol.3まで”3本立て”としてアップしている。その中の1本の説明を引用しよう。
「快が花のプロレスの衣装を乾燥機にかけてしまったことから始まったコスチューム事件。ついにビビと夢が事件について花と話をすることに。ビビの意見を聞いた花は涙をおさえきれず、プレイルームを飛び出す」
どうだろう、「事件」という煽り気味のワードを使っていることからも分かるように、制作サイドとしても木村さんへの批判を和らげるどころか、視聴者の関心をひくための「おいしいネタ」として使い倒しているようにしか見えない。
実際、エンタメニュースサイト「リアルサウンド」は5月18日に『「コスチューム事件」その後を巡る対立で久しぶりに見れた“番組名物”――『テラスハウス』第41話未公開映像』という記事の中で、制作サイドの前のめり感について以下のように驚いている。
『未公開映像ではテラハ史に残る修羅場となったあの「コスチューム事件」のその後が、3本の動画を通して未公開映像らしからぬボリュームで描かれたことが衝撃的だった』
つまり、木村さんが1日100件にも及ぶ誹謗中傷で心をすり減らしていたまさにそのとき、フジテレビ側は「よっしゃ、コスチューム事件、バズってるぜ」と言わんばかりにせっせっと、彼女を攻撃する人たちに新たな「燃料」を投下していた可能性があるのだ。
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