米国の老舗食品ブランドが、コロナ危機で再興している秘密(3/4 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、航空業界やホテル業界などが苦戦している。そんな中で、チャンスをつかもうとしている企業もでてきている。加工食品を扱う、大手食品メーカーだ。
キャンベル・スープ・カンパニーも恩恵
新型コロナ危機の恩恵を受けているのは、クラフト・ハインツ社だけではない。缶詰スープで有名なキャンベル・スープ・カンパニーも同様だ。
同社は過去数年、ブランドを象徴する缶詰スープの売り上げが減少していた。マーケティングに力を入れていることもあって、新型コロナの影響で需要が増えている。長期保存ができる缶詰スープは、非常食としてストックできるだけでなく、他の料理の調味料としても使用できるため、その便利さから買い置きする消費者が急増しているのだ。
今回のような商品の買いだめ増は、キャンベル社にとっては珍しいことではない。今までにも、ハリケーンなどの自然災害が発生した際には、缶詰食品などの売り上げが増加することを経験してきた。過去の経験をもとに商品の安定供給を継続させるため、原材料を多めに確保し、従業員の時給を一時的に上げ工場での生産量を増やす対策をしている。
ちなみに、新型コロナの影響が徐々に広がり始めた3月時点で比較しても、缶詰スープの売り上げは前年より約60%ほど増えている。キャンベル社が取り扱う、パスタソースのブランド「Prego」は約50%の増加、魚の形をしたクラッカーで人気の「ゴールドフィッシュ」の売り上げも、前年の同時期と比べて約20%ほど増えている。
また、キャンベル社は次の一手も抜かりなく考えているようだ。商品の需要が高まっているタイミングを逃さないように、ソーシャルメディアを活用したマーケティングに力を入れようとしている。
自宅で料理をする楽しさやメリットをソーシャルメディアの番組やインフルエンサーを通じて発信していくという。こうしたキャンペーンは、キャンベル社がターゲットとしている若者にアプローチできる効果的な手段になるだろう。特に今、外出制限によって、自宅で過ごす時間を料理に費やす人が増えているため、ネットでレシピを検索したり、写真や動画をシェアするのがトレンドになっている。
キャンベル社は、ソーシャルメディアでのプロモーション展開を通じて、消費者にレシピのインスピレーションを与えたり、コンテンツをシェアしてもらうことでブランドの知名度を上げようとしている。さらに近年、缶詰スープに使用する原材料の質をアップグレードしてきたことにとって、同社の商品をしばらく購入していない消費者に対して、再び興味を持ってもらうきっかけになるのを願っている。
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