コロナでの急なテレワークは結局「失敗」だったのか――第一人者に直撃:「働き方」は果たして変わるか(3/3 ページ)
コロナで急速に進んだテレワーク。企業・働き手にとって「成功した」と言えるのか。第一人者に直撃。
実は「コロナ前から分かり切っていた」問題ばかり
比嘉: 自宅で仕事用のスペースを確保できないという声は確かにとても聞こえてくる。オンライン会議中に子どもが入ってきたりなどだ。今の時期なら笑ってすまされるだろうが、コロナ後に在宅勤務が日常化すれば問題になるだろう。鍵を掛けられる書斎を持っている、恵まれた環境の人がどれだけいるだろうか。特に首都圏など(家賃が高く住宅が狭めの)大都市圏で問題になってくる。
比嘉邦彦(ひが くにひこ)。東京工業大学環境・社会理工学院教授。イノベーション科学系・技術経営専門職学位課程所属。米国州立ジョージア工科大学管理学部情報技術管理学科助教授などを経て現職。専門分野はクラウドソーシングおよびテレワーク全般、支援ツール、E-コマースの分析に加えて地域活性化。日本テレワーク学会会長や高知県アウトソーシング検討委員会委員長などを歴任。日本テレワーク学会の特別顧問、日本テレワーク協会のアドバイザーを務める
――単に「お互いの声が邪魔」といったレベルを超え、最近では家で一緒にいる時間が長くなった夫婦間の「コロナ離婚」すら話題ですね。
確かに、「夫が自宅にいるのに家事をしてくれない」といった不満は聞く話だ。ただ、コロナ騒動前からこれらは実は「分かっていた」問題だった。
かつて在宅勤務の実証実験を行ったある企業の調査では、「妻が夫の『在宅でもこれは勤務である』ということをちゃんと認識できておらず、家事への不参加などに怒ってしまった」「家族の理解を得られず気まずくなった」といった声が上がった。
会社によってはコロナ問題のずっと前の時点で、全社で在宅勤務を導入するに当たり、社長から家族に手紙を出していたところもある。「在宅勤務は勤務(の一種)なので、ご家族にはご理解をお願いします」といった内容だ。ただ、そういった準備や気遣いは今回、多くの企業であまりできていなかっただろう。
今回の在宅勤務導入で浮上した問題は、一般では知られていない一方、実は研究者の間では常識なものばかりだった。準備や手当をせずに(急速に)導入してしまい、発生した具体的な問題に右往左往してしまっている状況と言えるだろう。
――ありがとうございます。このように課題も多く浮上しているテレワークですが、一方で手応えや快適さを感じている経営者・従業員が少なくないのも事実です。後編では「コロナ後、テレワークは果たして定着するのか」に迫ります。
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