6700億円赤字の日産自動車 待ったなしの「選択と集中」、その中身とは?:生産能力と商品数は2割削減(1/3 ページ)
日産自動車が発表した2020年3月期決算では、純損益が6712億円の赤字に転落。“拡大路線”からの転換ができていない中で新型コロナによる危機が襲った。構造改革を進める4カ年計画では、生産能力や商品数の削減などによる「選択と集中」を加速させる。
日産自動車が収益性悪化に苦しんでいる。5月28日に発表した2020年3月期の連結決算では、純損益が6712億円の赤字に転落。リーマンショック時を大きく超える損失を計上した。同時に発表した構造改革の計画では「生産能力20%削減」「商品数20%削減」「固定費3000億円削減」といった策が並ぶ。23年度までの4年で業績の回復を目指すが、新型コロナウイルスの影響の長期化も見込まれる中、思い切った「選択と集中」が求められる。
「拡大路線」からの転換が遅れる
「これまでの失敗を認め、正すべきことを正す」。内田誠社長は決算会見で、再び成長するための決意を何度も口にした。「失敗」というのは、販売台数の増加を追い求める“拡大路線”からの転換ができていないことだ。
グローバルの需要拡大を前提に、新興市場を含めた事業規模拡大を目指したが成果は出ず、投資がかさんだ影響で主力の日本や北米市場への新商品投入が遅れた。その結果、年700万台ほどの生産能力に対して、販売台数は500万台前後にとどまっている。2年前から、拡大路線からの転換を図ってきたが、「この状態で利益を出すことは困難」(内田社長)になっていた。
20年3月期決算にはその結果が現れた。新型コロナ感染拡大による影響も重なり、売上高は前期比14.6%減の9兆8789億円、営業損益は405億円の赤字(前期は3182億円の黒字)、純損益は6712億円の赤字(前期は3191億円の黒字)。グローバル販売台数が1割減の493万台に落ち込んだほか、構造改革費用と固定資産の減損損失で6030億円を計上したことが収益を圧迫した。
一方で、自動車事業の手元資金は1兆4946億円を確保し、4〜5月には新型コロナ対応を目的とした7126億円の資金調達も行っている。内田社長は「資産流動性を維持し、危機対応に必要な資金は確保できている」と強調する。
21年3月期については、世界全体の需要が15〜20%の減少になると見込むが、新型コロナが事業に及ぼす影響が不透明であることから、業績予想の公表は見送った。
収益性を高めるための改革は急務であるといえるが、具体的にどのような取り組みを計画しているのか。
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