マツダの決算 減収減益の中で好内容:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)
マツダのオンライン決算発表が行われた。販売台数ダウン、減収減益という中で、決算内容そのものは課題だけでなく、光明が見えるものだった。
台数ほどには落ち込まなかった売り上げ
しかしながら、売上高を見るとマイナス幅が4%となっている。つまりは昨年より高いクルマが売れていて、台数のダウンを半減程度にカバーし、直撃を免れているということになる。
売上高の地域別をチェックしてみよう。マツダの決算資料からデータを抜き出して、年度ごとに合計してから対前年度比を出してみる。日本は93.5%、北米は102.8%、欧州は100.9%、その他が83.8%となり、どうやら売上高のダウンは、日本とその他の地域が問題らしいことが分かる。日本の場合は容易に想像がつくが、消費税増税の需要減が遠因だろう。
実際地域別の販売分析ページで日本の販売を見ると、台数が6%落ちていつつ、登録車シェアは前年同水準とある。つまりは全需の落ち込み(5%)通りに推移してしまったということになる。
では北米はどうだろう? こちらも販売台数は6%落ちているのだが、先ほどの売上高前年比の計算では、むしろプラスとなっていたので、台数はダウンしながらも構成が良くなっていることを意味する。確かに比較的高価格のCX-5/CX-9は対前年で台数増とある。つまり、北米については、より高付加価値の車両へとうまくスライドできたということだ。
欧州はどうか? こちらも台数は咋対比で2%減。しかし、こちらも売上高前年比の計算ではむしろプラスになっていることから、北米以上に構成を改善し、より高付加価値の車両が売れていることになる。
中国は咋対比で販売が14%減だ。内容を見たくとも、ここは同じ条件で売上計算が出せない。なぜならば、マツダの中国法人は連結決算対象ではなく、持分法の範囲でのみ利益が計上されるので、売上や利益に関しては、年度の区切りが違うのだ。なお、台数については例年、日本の年度に合わせて日本の決算発表資料のために4月-3月で集計し直したデータになっている。中国市場の場合、利益にしても損失にしても持分法の範囲(概ね半分)しか影響を受けないので、こういう荒れ相場の時は、本体のマツダとしては助かるだろう。
その他地域は厳しい。全体としては16%ダウン。マツダが強い豪州では18%減で、ここでは利益も出血が多い。このへんで勘の良い人なら原因が見えてくる。マツダは、米ドルの為替変動には強いが、豪ドルの為替変動に極めて弱い。米国ではプラスが出ていて、豪州で大きくマイナスということはまた円高でやられているのではないか?(「マツダ藤原副社長インタビュー(2)」参照)
関連記事
- 自動車を売るビジネスの本質 マツダの戦略
原理原則に戻ると自動車ビジネスもシンプルだ。商品とサービスに魅力があれば、新車を正価、つまり値引きせずに売れるから中古車の相場が上がり、その結果下取り価格が高いので、買い替え時により高いクルマが売れる。これが理想的サイクルだ。それを実現した例として、マツダの取り組みを歴史をひもといてみよう。 - 象が踏んでも壊れないトヨタの決算
リーマンショックを上回り、人類史上最大の大恐慌になるのではと危惧されるこの大嵐の中で、自動車メーカー各社が果たしてどう戦ったのかが注目される――と思うだろうが、実はそうでもない。そして未曾有の危機の中で、トヨタの姿は極めて強靭に見える。豊田社長は「トヨタは大丈夫という気持ちが社内にあること」がトヨタの最大の課題だというが、トヨタはこの危機の最中で、まだ未来とビジョンを語り続けている。 - ホンダの決算から見る未来
ホンダの決算は、コロナ禍にあって、最終的な営業利益率のダウンが4.2%レベルで抑えられているので、酷いことにはなっていない。ただし、二輪事業の収益を保ちつつ、四輪事業の利益率を二輪並に引き上げていく必要がある。特に、武漢第3工場の稼働など、中国での生産設備の増強は続いており、中国マーケットへの傾倒をどうするかは課題だ。 - 悪夢の「マツダ地獄」を止めた第6世代戦略
一度マツダ車を買うと、数年後に買い換えようとしたとき、下取り価格が安く、無理して高く下取りしてくれるマツダでしか買い換えられなくなる。その「マツダ地獄」をマツダ自身が今打ち壊そうとしているのだ。 - マツダの決算 またもや下がった利益率の理由
売上高は増収だったが利益面の落ち込みが激しいマツダの決算。北米と中国市場の不振が響いた結果だ。今後に向けて、販売店改革とパワートレーンの刷新を進めるが、これが北米市場で実を結ぶかどうかが焦点となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.