マツダの決算 減収減益の中で好内容:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)
マツダのオンライン決算発表が行われた。販売台数ダウン、減収減益という中で、決算内容そのものは課題だけでなく、光明が見えるものだった。
ブランド価値販売と販売台数
マツダは、悲願であったブランド価値販売をほぼ実現した一方で、それと引き換えに販売台数を落としてしまった。
マツダの販売台数がピークを付けた3年前の18年実績では、グローバル販売台数は、163万1千台を記録し、生産キャパシティが限界に達しようとしていた。当時の決算で「21年までは販売台数増加を毎年5万台程度に抑制する」という発言まで出た。21年とはアラバマ工場の稼働が始まる年であり、つまりそれまではクルマが売れても作れない状況だとマツダは見ていた。
そうした事情を背景に、レンタカー会社に買い戻し権を設定してまとめ売りするフリート販売などを大幅に抑制した。こういう大口需要は当然大きな値引きを求められるので、台数あたり利益を悪化させる。生産がネックになって販売台数増が見込めない以上、台当たり利益を下げるフリートを減らすのは妥当な戦略に思えた。もちろん通常販売の現場でも値引きを抑制する動きが加速した。
戦略としては正しかったはずのそのやり方が、オーバーシュートした。値引きの抑制を図った翌年には、販売台数を5万台増やすどころか7万台減らして156万1千台に落ち、中国景気の減速とコロナ禍に見舞われた今期は、ピークから21万2千台ダウンの141万9千台まで縮小してしまった。実は第7世代投入の効果により、北米では1月、2月の販売は好調で、波に乗ったかに見えたところで、ロックダウン騒ぎである。このあたりのマツダの運の無さは見ていて気の毒になる。
しかも販売台数の拡大を見込んで行った先行投資は、今更ストップできない。14年に操業開始したメキシコ工場や、現在進行形で建設中のアラバマ新工場など、生産能力の向上を進めて来たマツダとしては、今後、工場の稼働率を保つことも重要な課題であり、一周回って、台数を売らなくてはならない状況を迎えた。
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