契約書を全面電子化へ LINEの挑戦:1カ月で1000件以上の契約書(1/4 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、在宅勤務を推奨してきたLINE。しかし押印担当者は毎日出社を余儀なくされていたという。そこで契約書の電子化を進めたが、大きな課題も見えてきた。
新型コロナウイルス感染症対策の一環としてテレワークを導入した企業は少なくない。しかし、どうしてもリモートからでは処理できず、出社を余儀なくされている業務もある。代表例が書類への捺印業務だ。
筆者も含めやや年のいった人ならば、これまでの人生の中で一度ならず「ペーパーレス化」という言葉を耳にしたはずだ。何度かの波を経て、FAXからメールへ、紙の会議資料からPowerPointやPDFへ、紙の稟議書からクラウド上のワークフローへといった具合に業務のオンライン化、デジタル化が進んできた。
しかし、どうしても電子化が難しい領域が「相手先」のある書類への捺印(なついん)業務やその確認作業だ。テレワークが広がっても、いや広がったからこそ、請求書や発注書、契約書といった「紙」の処理がデジタル化から取り残されていることが鮮明になってきた。
例えばfreeeが4月に実施した調査によると、1〜300人規模の中小企業で、テレワークを導入しながらもほぼ毎日出社しなければいけないと回答した人は16.3%、週に2、3回程度の出社を余儀なくされている人も21.6%に上った。
出社せざるを得ない理由として多く挙げられたのは「取引先から送られてくる書類の確認・整理作業」で38.3%。他に「請求書など取引先関係の書類の郵送業務」が22.5%、「契約書の押印作業」が22.2%といった具合で、取引先とやりとりするさまざまな書類にはんこを押し、郵送する作業のために出社を余儀なくされている人が少なくないことが明らかになった。
だが、新型コロナウイルスの感染リスクを冒してまで、一連の処理は紙でやりとりしなければならないのだろうか。そもそも業務の効率化に当たって、捺印と書類のやりとりがボトルネックになっていないだろうか──そんな考えから「脱印鑑」を宣言し、契約業務の電子化に取り組み始めた企業が登場している。LINEもそんな一社だ。
昨年から準備してきた電子契約、新型コロナ対策を機に全社導入
LINEは、新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2〜3月にかけて段階的に在宅勤務を選択できる体制とし、3月25日の都知事による要請後はテレワークを希望制から「推奨」に切り替えてきた。だが、テレワーク推奨となった後も、押印担当者は毎日出社を余儀なくされていたという。
というのも、同社が国内外の取引先と交わす契約書の数は、時期によって多少の変動はあるが1カ月当たり1000〜1500件に上る。これだけの数の契約書を印刷して製本し、捺印し、先方に送付する、といった一連の業務はリモートでは不可能だからだ。
そこでLINEは4月13日、一部の契約書の電子化を始めた。どんな効果があったのか。
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