テレワークを阻む「ハンコ文化」は政府の“太鼓判”で消え去るのか?:働き方の「今」を知る(1/5 ページ)
新型コロナの影響で導入が進むテレワークだが、それでも出社しないといけない環境を生み出しているのが「ハンコ」だ。もともと、無駄が多く生産性の低い「日本的」な労働慣行の代名詞でもあったハンコだが、従業員の感染リスクを減少し、生産性を高めるためにも官民でようやく「電子化」の機運が高まり始めている。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、「3密」状態となる通勤電車やオフィス勤務時の感染可能性に配慮し、テレワークを導入する企業が増えているようだ。しかし、せっかくテレワークを導入しておきながら、オフィス出社を強要されるという意味不明の事態が相次いで報告されている。原因は「ハンコ」の存在だ(ハンコ本体の正式名称は「印章」であり、商取引等で照合するための印影が「印鑑」と定義されているが、一般的には用法が混在している。本稿では「ハンコ」を用いる)。
政府が緊急事態宣言を出した翌日、人影まばらなオフィス街に出勤途中だった男性は、テレビのインタビューにこう答えていた。
「どうしても今日ハンコもらわないとダメですので……」
実際、各種調査でも「テレワークでありながら出社の必要がある人」の存在と、その背景にある「ハンコ」を浮き彫りにしている。中小法人を中心にクラウド会計ソフトを提供するfreee社の調査によると、「テレワーク中に出社しなければならない」と回答した人は76.7%、その理由については「取引先から送られてくる書類の確認・整理作業」が38.3%、「契約書の押印作業」が22.2%。調査の対象である比較的小規模の事業者や内勤事務職などはまさにテレワークを導入しやすい形態であるにもかかわらず、紙やハンコの押印が必要な作業の為に出社せざるを得ない人が多いことが分かる。
また、主に大手企業が加盟している日本CFO協会の調査においても、回答者の41%が「テレワーク実施中に出社する必要が発生」と答えており、出社理由はここでも「請求書や押印手続き、印刷など紙データの処理」といったものが目立つ。一方で、テレワークを実施していない企業の理由もまた「請求書や契約書など紙の書類がデジタル化に対応できていない」が77%という状況だ。
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